尖閣諸島のアホウドリ 環境省が調査へ 初の衛星画像解析 植生図も5年ぶり着手


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尖閣諸島

 【東京】環境省が尖閣諸島に生息する絶滅危惧種のアホウドリの生態調査に乗り出すことが15日までに分かった。人工衛星が撮影した高解像度画像を使った調査で、衛星画像による尖閣でのアホウドリの調査は初めて。業者の選定を11月中に終え、12月中の撮影を目指す。同省は同島の植物の分布を図示する「植生図」の作成にも5年ぶりに着手する見込みだ。

 加藤勝信官房長官は15日の記者会見で、調査について「自然環境の把握を目的として、環境省が全国を対象に実施している各種調査の一環」と説明した。尖閣周辺で中国海警局の船による領海侵入が頻発しており、けん制する狙いがあるとみられる。

 環境省希少種保全推進室によると、高解像度の衛星画像でアホウドリの生息状況を調べ、個体数の推定などを行う。

 衛星画像を撮影する業者は一般競争入札で募集する予定で、11月10日の開札に向けて準備を進めている。

 アホウドリは尖閣諸島のほか、伊豆諸島鳥島でも生息している。同省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。鳥島では保護増殖事業を実施し、個体数は増加傾向にある。

 一方、尖閣諸島では2002年以降、生息状況の調査が行われておらず、保護活動も手つかずのままになっている。

 また、島内の植生図を作成するのは08年、15年に続き3回目。人工衛星画像から植生データを収集し、図面化する。業者との契約を進めており、11月中に着手する。

 尖閣諸島での生態調査を巡っては、石垣市議会の平良秀之議長らが15日までに上京し、小泉進次郎環境相ら関係閣僚に、島の生態系を脅かすヤギの食害や、センカクモグラなど固有種の実態調査への協力を要請していた。平良議長は「最新の人工衛星を使った調査は大きな一歩だ。アホウドリの調査だけでなく、ほかの生態調査にも結び付けばいい」と期待を寄せた。