米軍消防と宜野湾市消防「協約」適用せず 普天間泡消火剤流出 情報共有もなし


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 【宜野湾】米軍普天間飛行場で4月に泡消火剤が流出した事故で、宜野湾市消防本部と米軍消防が、災害時などに活動を相互に支援する「消防相互援助協約」を結んでいるにもかかわらず協約を適用せず、除去活動に必要な情報の共有や協力要請をしていなかったことが16日、分かった。協約は2011年に締結されているが、これを基に泡消火剤に関する事前の情報共有や、事故を想定した訓練を実施してこなかったことも判明した。識者は「泡消火剤流出は協約を適用すべき災害に当たる」と指摘している。住民を守るため連携を図る協約が機能していない実態が浮き彫りになった。

 調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP、河村雅美代表)の調べを基に、琉球新報が追加取材した。

 IPPが市に情報公開請求した協約によると、市消防と米軍キャンプ・バトラー消防本部は「双方の管轄する地域社会の火災及びその他の災害から生命、財産を保護」することなどを目的に締結された。火災や災害発生時に要請を受けた側が協力して対応に当たるほか、最新の消火薬剤や機器などの情報交換、訓練などを通して援助体制を確立することにも同意している。

 米軍は4月の事故時、基地内の対策を優先し、基地外で泡消火剤の回収は実施しなかった。一方で宜野湾市消防は基地外で泡消火剤の回収や放水に追われた。

 同消防は回収活動と協約との関係について、消防組織法1条などを根拠に「消防法など関係法令で明確に定義されている活動ではない」として「対象となる事案に該当しない」との見解を本紙に示した。泡消火剤に関する訓練や情報共有は「協約に含まれない」とし、事故対応は「一義的に米軍が対応すべきだ」と主張した。これまで協約を適用した事例や訓練はないという。

 事故現場となった宇地泊川の管理者が県であったことなどから「県が主体的に対策本部を立ち上げ、調整に沖縄防衛局が関わることが望ましい」と指摘した。その上で「協約の改訂などは現在考えていない」とした。

 消防行政に詳しい山内正・元県消防学校長は災害対策基本法62条で、市町村長が災害の応急措置を実施すると規定していると指摘。泡消火剤流出はその災害に当てはまるとして「消防は一義的に防除をしないといけない」と述べ、協約を適用すべき事故だったと強調した。

(金良孝矢)