サンゴが雲形成か? 東大、OIST ミドリイシ属のゲノム解読 環境適応解明に期待


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 東京大学大気海洋研究所の新里宙也准教授と沖縄科学技術大学院大学(OIST)の佐藤矩行教授らはこのほど、石垣島や沖縄本島近海に生息するミドリイシ属15種を含むミドリイシ科サンゴ18種の全遺伝情報(ゲノム)を解読した。その結果、ミドリイシ属サンゴは雲を形成して日光を遮ることで、温暖な地球環境を生き抜いていた可能性があることが分かった。研究チームは今回の研究で得たゲノム情報はサンゴが今後の環境変動に適応できるかなどを解明する大事なツールになると期待している。

 研究の成果をまとめた論文が15日発行の英科学雑誌「モレキュラーバイオロジーアンドエボリューション」に掲載された。

 研究チームはミドリイシ科サンゴ18種のゲノム情報と化石記録を組み合わせて解析。ミドリイシ科の祖先は、北極や南極に氷がなく、現在よりも温暖な気候で恐竜が生息していた白亜紀に誕生したことも初めて明らかになった。

 サンゴはDMSPという分子を分解して硫化ジメチル(DMS)という化合物を生成する酵素「DMSPリアーゼ」を持っている。DMSは海から大気中に放出されると水蒸気を集めて水滴や氷の粒となり、雲を生成する手助けをすると考えられている。

 今回の研究で、ミドリイシ属サンゴには「DMSPリアーゼ」を作り出す遺伝子が最大で20個程度あり、他のサンゴより多くあることが分かった。こうした結果から、研究チームはミドリイシ科の祖先は雲をつくることで過去の温暖な環境を乗り越えた可能性があると考えている。

 県出身の新里准教授は「DMSから雲を作る仕組みがあると推測されているが、まだ証明はされていない。今後もチームでさらに研究を進めていきたい」と話した。