【記者解説】伝染疾病エビ大量死なぜ沖縄で? 高級ブランド守る防疫体制を


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国内で初確認となるエビの特定疾病「急性肝膵臓壊死症(AHPND)」が発生した養殖場で処分されるバナメイエビ(県水産課提供)

 大宜味村のバナメイエビ養殖場で国内初確認された特定疾病「急性肝膵臓壊死(すいぞうえし)症(AHPND)」について、県は感染経路を養殖種苗(稚エビ)の輸入先のタイと想定する。バナメイエビは世界流通の8割を占める食用エビで、日本でも近年、養殖が広がりつつある。今回の発生養殖場も県内で初めてバナメイエビの養殖に乗り出した施設で、県は当初から稚エビの輸入による感染症の侵入リスクを警戒していた。

 甲殻類の感染症であるAHPNDは2009年に中国で初めて確認され、その後ベトナム、マレーシア、タイ、メキシコ、フィリピン、アメリカ、台湾で発生が確認されてきた。

 感染した場合の致死率が高く、まん延すれば近縁種のクルマエビにも壊滅的な被害をもたらす。沖縄の高級水産ブランドとして育ててきたクルマエビ養殖を守る上でも、徹底した防疫体制の構築が求められる。

 バナメイエビは国内の店頭でも一般的に流通し、東南アジアなどからの輸入が多い。ブラックタイガーからバナメイエビへの養殖に移行する国もあり、日本国内でも10年ほど前に陸上養殖が始まった。

 特定疾病の侵入を防止するため、稚エビを輸入する際は県が「着地検査」として輸入後の生育状況を確認する。大宜味村の養殖業者は「飼育状況報告書」を定期的に県に提出することが課されていたが、発生業者から約2カ月にわたり提出がなく、県の立ち入り検査に至った。

 輸入種苗を使っての養殖に、県は「事前に病気の危険性を(業者に)再三説明した」(能登拓水産課長)と話す。発生養殖場の排水状況や近隣に養殖場がないことから感染の広がりは限定的と見られているが、水際防止の体制や事業者の防疫意識などの課題が突き付けられた。

 加藤勝信官房長官は19日の記者会見で、「農林水産省で沖縄県に必要な技術的支援を実施している。防疫措置を徹底するよう連携して取り組んでいく」と説明。他の都道府県に対しても、農水省が注意喚起の文書を出すなどして対応するとの見通しを示した。

 沖縄の養殖漁業全般の問題として、行政、業界を挙げて感染症の侵入リスクに備える対応に取り組む必要がある。
 (石井恵理菜)