採算性あるのは34店 経営悪化回避へ統廃合急ピッチ<連載「自己変革」の波紋 JA沖縄店舗再編(上)>


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JAおきなわが進める店舗再編により23日で廃止となる辺野古出張所=16日、名護市

 採算性のある店舗は、わずか34店舗―。JAおきなわが2019年の春先から夏にかけて実施した、金融機能を有する信用事業店舗102店の採算性シミュレーション結果に、衝撃が駆け巡った。マイナス金利下の収益悪化を受けて同年7月ごろから再編の話し合いが始まってはいたが、3分の2が採算性なしという厳しい現実を突き付けられた。前田典男専務は「恐怖感があった」と振り返る。より強い「自己改革」に動き出さなくては、未来はない。再編論議が一気に加速した瞬間だった。

 JAの指導機関である農林中金は、JAの破綻を未然に防ぐ役割がある。仮にJAおきなわが経営改善をしなければ、農林中金が主導して店舗の大幅な再編に踏み切る可能性もあった。

 JAおきなわの信用店舗は県内に102店。02年に県単一JAに合併する以前、地域インフラとして店舗網を拡大した名残で、県内地銀の平均支店数約60店よりも多い。一方で過疎化や銀行との競争で1日の事務量が20件の店舗や、貯金量が30億未満の店舗も散在する。人件費や店舗維持費などの固定費は変わらず発生する中、経済合理性から維持が難しい店舗も多い。

 強い危機感から、JAおきなわは19年11月ごろから本格的な再編計画策定に着手した。1年以内の実行に、職員は「異例のスピードだ」と表現する。背景には02年、県内の27JAが合併した際の教訓があった。

 実態調査により約300億円の不良債権の存在が明らかになり、貯金保険機構などから資金援助を受けざるを得なかった。誕生時から財務基盤強化を課されたJAおきなわは、信用事業再構築計画を策定し、信用店舗約30店の統廃合、購買店舗と集荷場の大幅廃止を実行した。職員約700人のリストラも実施した。

 計画を推進したのは、合併直後にできた「改革推進室」で、初代室長を務めた現理事長の普天間朝重氏。普天間理事長は「毎日ポツポツと机が空き、退職願の封筒が僕の机に置かれた」と振り返る。

 合併時に、自己資本比率が基準を下回り融資規制を受けた経験から、経営悪化による悪影響が農家に及ぶことを危惧する。「問題を先送りすると処理が難しくなるのは身に染みている。組合員の反発は覚悟の上だ。経営改善が最終的には組合員のためになる」と強調した。
 (石井恵理菜)


 JAおきなわが進める店舗再編計画が始動し、最初の統廃合の対象として13店舗が23日に閉店する。農業事業の赤字を金融事業で穴埋めしていたが、22年3月末までに信用店舗25店を廃止し財務基盤を立て直す考えだ。経営を改善し農家に還元することが目的だが、サービス縮小は避けて通れない。再編のジレンマに迫る。