執行部「奨励金」減額に焦り 組合員、根強い支店存続の声<連載「自己変革」の波紋 JA沖縄店舗再編(中)>


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JAおきなわが進める店舗再編計画で、支店存続を求めて県内各地で集会が開かれた=2月18日、名護市

 今年1月、JAおきなわ本部(もとぶ)支店で運営委員長を務める比嘉由具さん(71)の下に、店舗再編計画に関する文書が届いた。県内支店102店舗を72店舗に統廃合する内容に、驚きを隠せなかった。JAおきなわの最高意思決定機関である経営管理委員会の2月の会合で、計画が承認される流れになっていると聞いた。本部支店は「よりそいプラザ」に変更して規模縮小となることも計画案に盛り込まれていた。

 支店運営委員長はエリア内で農業を営む組合員の代表だ。「支店は地域や組合員の生活を支える。無くなれば厳しくなる」。大規模な統廃合計画にもかかわらず、地域や組合員に十分な説明もないままに実行に移されようとしていることに危機感を抱いた比嘉さんは、組合員や町民を対象に支店存続に向けた署名活動に乗り出した。

 沖縄の農業を支える本島北部や離島で過疎化、高齢化が進む中、組合員の出資で成り立つ協同組合のJAは、経済合理性だけではない農村地域を支えるインフラの役割が期待されている。支店は金融機能だけでなく、組合員の交流の場など多くの役割を持つ。

 2月に再編計画が新聞報道されると、地域の合意形成を抜きに店舗の統廃合を進めようとすることへの反発がさらに広がり、支店存続を訴える活動が各地で始まった。

 記者会見したJAおきなわの又吉宗光常務は「経営環境が厳しい中、時間的な余裕がなかった。意見を伺いながら早い対応をする」と、地域への説明不足を釈明した。

 JAおきなわ執行部が店舗再編を急いだ背景に、農林中央金庫から預金利息として還元される「奨励金」の減額があった。19年度から減額が始まり、4年間で計8億円の減収となる。信用事業の収益で農業事業の赤字を埋めるJAおきなわの収益モデルが、さらに圧迫される。奨励金の大幅減額に見合った経費削減が迫られ、焦りがあった。

 しかし、経営改善を優先した拙速な対応は、店舗統廃合の対象地域の批判と混乱を招いた。地域の反発を受け、経営管理委員会は2月の会合で店舗再編計画を承認することを見送った。執行部は現場の理解を得る取り組みとして、地域組合員の代表である支店運営委員会への説明会を実施。この1カ月を経て、3月27日の経営管理委員会で計画が承認された。

 全組合員を対象とした説明会は当初4月に予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期になった。7月から各地で地域説明会が始まり、全て終了したのは10月に入ってからだった。廃止が決まった恩納村の山田出張所の利用者は「決まった計画を説明されてあきらめる組合員は多い」と話すように、計画の承認後はあきらめムードが漂う地域もある。

 ある廃止予定店舗の職員は「組合員の気持ちがよく分かる。事前に意見交換があれば、この店舗も生き残れたのかもしれない」と暗い表情を浮かべた。

 23日の営業をもって13店舗が閉店し、JAおきなわの店舗再編が動き出す。本部支店の存続に向けて声を上げてきた比嘉さんは「信用事業が厳しいのは理解している」と語るものの、支店存続への思いは変わらない。預金を増やし店舗の採算を黒字化しようと運動を続けている。「地域で支店を支えたい。これが協同組合の形だ」と前を見据えた。

 (石井恵理菜)