台湾デジタル大臣×玉城知事「最新技術、離島にこそ」「市民の集団知生かして」対談詳報


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 宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで同時開催している「ツーリズムEXPOジャパン 旅の祭典in沖縄」「リゾテックオキナワ おきなわ国際IT見本市」は10月31日から展示会場の一般公開が始まった。玉城デニー知事と台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏の特別対談のほか、テクノロジーの活用による観光産業の変革をテーマにしたシンポジウムなどを通して、近未来の沖縄や観光の方向性を探った。両イベントは11月1日で4日間の日程が閉幕する。

オンラインでオードリー・タン氏(奥中央の画面)と対談する玉城デニー知事(奥右)=31日午後、宜野湾市真志喜の沖縄コンベンションセンター会議棟

 玉城知事とタン氏の対談は、新型コロナウイルス感染症対策やSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向け、デジタル技術を活用する必要性などが話し合われた。

 台湾はコロナ対策として政府がマスクを買い上げて販売を開始した。タン氏自ら市民エンジニア(シビックハッカー)と共に、マスクの在庫確認システムを数日間で作り上げた。

 地元の住民に信頼されている薬剤師を通じてマスクが行き渡るようにしたとして、タン氏は「トップダウンではなく、集団知として、最前線にいる人の知恵を政府の対策に生かした」と政策の考え方を説明。「デジタル技術は、危機が起こって通常のことができなくなった時に非常に役に立つ。イノベーション(革新)はポストコロナでも活用できる」と強調した。

 「デジタルに親しみのない高齢者にどうアプローチすれば良いのか」という玉城知事の質問に対し、タン氏は88歳の祖母から、周辺の高齢者の感じている不安についてアドバイスを受けていると説明した。「こうだったら安心できるというやり方が高齢者にはある。それを分かれば使ってもらえる」として、不安を把握した上でデザインをする必要性を指摘した。

 タン氏は離島や先住民族の居住地を訪れる際に、必ず中央政府や地方行政庁と接続できるビデオ通話システムを持参するという。ドローンを使った薬の配達など、離島やへき地こそ最新技術を使った課題の解決が必要だと話した。

 玉城知事は「コミュニティーが求めているものを突き詰めていけば、離島など遠い地域でこそ先駆的な取り組みができる」と話した。

 タン氏は2015年に沖縄を訪れた際に台風に見舞われたが、風水害の被害予想がリアルタイムで発信されたことに「社会、環境を良くするために技術を使っている」と感銘を受けたという。16年に大臣に就任した後、地震や台風の予想システム構築を進めた。

 今後の連携について、玉城知事は「2、3世代先のためにどういうテクノロジーを作り出していくか、距離も関係性も近い台湾とデジタルで連携していくのを、県としてしっかりサポートしたい」と期待した。タン氏は「島国の人たちにしかないレジリエンス(復元力)という共通点がある。今後の連携を楽しみにしている」と話した。