首里城火災「忘れず心に刻む」 地元の青年会ら、再建願い旗頭を演舞 思い込め黙とう


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 「再建に向けて前へ歩もう」「火災を忘れず心に刻もう」―。首里城正殿などが焼失した火災から1年を迎えた31日、県民らは“沖縄のシンボル”首里城にさまざまな思いをはせた。火災は大きな喪失感を与えた一方で、地域の宝や絆、沖縄文化の魅力に改めて気付く機会にもなった。再建される首里城はどうあってほしいか、どう向き合っていきたいか。それぞれの立場で未来を見据えている。

首里城再建を願い旗頭の演舞を披露する首里中旗頭同好会(手前)と首里当蔵町青年会=31日、那覇市首里大中町の中城御殿跡

 那覇市首里大中町の中城御殿跡では31日、「首里城復興イベント」が幕を開け、首里当蔵町青年会や首里中旗頭同好会が再建を願い、旗頭の演舞を披露した。当蔵町青年会はイベント終了後、旗頭に明かりをともして首里城に向かい、黙とうをささげた。

 昨年10月31日未明。当蔵町青年会の仲田哲進(てっしん)会長(37)は仲間からの電話で火災を知った。龍潭付近に出ると、みんなが燃えさかる首里城を見ていた。「燃えているのに何もできない。むなしかった」。首里城の関連催事で何度も旗頭を上げてきたが「どんなに特別で大切なことだったか」と気付かされた。

 火災直後、首里の各地域では「旗頭を上げて鼓舞しよう」という声もあれば、「自粛すべき」という声もあった。当蔵町青年会は「上げたい思いもあったが我慢した」。今回の復興イベントについては住民の中にも「旗頭を上げてほしい」という声が多く、出演を決めたという。

 黙とうを提案したのは青年会メンバーの石崎翔さん(33)。「火災を思い出して沈んでいる人にも寄り添いたかった。演舞以外でも首里城への思いを伝えることはできる」と話す。今年は当蔵町だけで行ったが、今後は首里の各青年会が地元で旗頭に明かりをともし、静かに首里城を思う日にできたら、と展望を描く。石崎さんは「首里城はいろんな人々の思いがあって形をなしている。10月31日は火災を忘れず心に刻む日にしたい」と話した。