大接戦の米大統領選 沖縄の基地負担は変わる? 佐藤学沖縄国際大教授に聞く


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この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
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 米国大統領選挙は、予想を超える大接戦になり、いくつかの州の開票が終わるまで、数日間、最終結果が分からない状況が続きそうである。トランプ大統領は、残る開票を止めさせるよう、連邦最高裁に要請したが、これは当然受け入れられない。しかし、開票が訴訟に至れば、最終的には共和党が任命した判事が多数を占めるので、トランプ氏を勝利に導くであろう。

 選挙結果がどちらに転ぼうと、沖縄に及ぼす影響は、沖縄にとって望ましい方向にはならない。トランプ氏再選になれば、1期目の政策が継続される。同盟国に対して、米国利益を最優先とする方針を強いる、米軍引き揚げの恫喝(どうかつ)により、同盟国の駐留負担を増大させ、米国製兵器の購入を増大させる、対中強硬・対立姿勢を強める。他方、自国軍は派遣しないで、代理戦争の構えを執らせる。

 尖閣を巡る緊張を理由として、沖縄の負担を増大させる方策が執られ、しかし、米国自身は戦闘に加わらない。それに応える日本政府の沖縄政策は、より直接に軍事基地化を進めることに向かう。

 バイデン候補が勝つ場合には何が見込まれるか。バイデン氏は、米国の伝統的な軍事・外交政策、同盟関係重視の姿=正しい姿=に戻すことを主張している。
 この「米国主導のリベラルな世界秩序」の下の「正しい軍事・外交政策」は何をもたらしたか。今世紀を振り返ってみただけでも、イラク・アフガン戦争である。この時の過重な勤務による整備ミスが原因で、沖縄国際大ヘリ墜落が起きた。これは、共和党政権だったからではない。

 バイデン氏と同じ民主党クリントン政権が、1995年の少女乱暴事件後に、辺野古基地建設を掠(かす)め取ったこと、ノーベル平和賞受賞者でもあるオバマ前大統領が、無人飛行機ドローンによる大量殺害を激化させ、そして現行の辺野古計画を推進してきたこと。沖縄にとり、米国の作った「リベラルな世界秩序」での「ノーマルな政策」は、望ましいものではない。

 また、バイデン政権でも、対中強硬政策は変わらない。沖縄が軍事対決の最前線に置かれる将来像に変わりはない。
 前回大統領選挙後にトランプ氏の横紙破りの振る舞いが、在沖米軍引き揚げをもたらす、という期待があったが、それはそもそもかなう訳がなかった。苦難の道が続く。(随時掲載)