「養育費支払え」米兵にハワイ裁判所命令 沖縄の女性請求、支援組織が居場所特定


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事情聴取の日程を知らせる、ハワイ州の養育費回収機関からの通知(スミス美咲代表提供、画像の一部を加工しています)

 本島中部の20代女性が米兵との間に生まれた子どもの養育費を求めて、所在不明となっていた米兵の居場所を突き止め、米国ハワイ州の裁判所命令で養育費の支払いが認められたことが5日までに、分かった。女性は米国の「養育費回収システム」を利用した。米軍人や軍属との交際や結婚で生じるトラブルの相談に応じる、支援団体「ウーマンズプライド」(北谷町)のスミス美咲代表が捜索や翻訳などで支援した。

 米国の養育費回収システムは別居中の親の居場所を突き止め、法的な親子関係を確定し、養育費を回収する仕組み。養育費支払いの命令に反すると懲役刑を受ける場合もある。養育費を請求する相手が米国内にとどまっている場合のみ有効で、日本など米国以外にいる場合は活用できない。

 女性は12月から子どもの父親である米兵から、毎月約11万円の養育費を受け取る。養育費を巡る同様のトラブルはこれまでにあるが、日本人女性にとって英語や米国の法令が障壁となっていた。日本国内から米国の同システムを活用した事例はほとんどないとみられる。

 女性は17年7月から米兵と交際した。18年3月、女性の妊娠を知ると米兵は姿を消し、連絡も取れなくなった。後に妻子がいることが判明した。女性が把握しているのは米兵の氏名と生年月日、「ハワイから数カ月おきに飛行機整備の仕事で県内の基地に来る」という情報だけだった。

 米兵の居場所特定のため女性は県内の弁護士に相談したが、米兵の社会保障番号や所在地を特定できないため支援を断られたという。女性から相談を受けたスミスさんは、会員制交流サイト(SNS)や動画サイトなどを利用して米兵の画像を見つけ、制服などの断片情報からハワイの所属基地や部隊を特定した。米兵の司令官に通知すると「裁判所命令がないと動けない」と対応してもらえなかったため、養育費回収システムを利用した。

 女性はDNA鑑定を行い、10月10日に米兵が子どもの父親と確定した。子どもが18歳になるまで、養育費の支払いが命じられた。女性は「(養育費回収システムを利用できたのが)信じられない。ひと安心した。居場所に関係なく、日米間でも利用できる制度があれば、泣き寝入りせずに済むのではないか」と話した。