コロナ後の沖縄「欧米の観光客呼ぶには…」 JTB社長に聞く


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山北栄二郎JTB社長

 国内旅行会社大手のJTB(東京都)の山北栄二郎社長が、10月29日~11月1日に沖縄で初開催されたツーリズムEXPOジャパンに合わせて来県した。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響で観光が大きく落ち込む中、旅行業の現状や今後の見通しなどを聞いた。

 ―観光需要の動向をどう見るか。

 「Go Toトラベルの効果で、国内需要は動いている。沖縄は感染拡大のタイミングが影響し、一歩遅れて追い付いてきている。感染状況が大幅に変わらなければ国内の個人旅行は、年末ごろには前年並みの回復を期待している。これまで交通機関に乗らずに隣県に旅行する人が多かったが、Go Toへの東京追加後は遠距離まで動くようになった」

 ―沖縄の観光回復に向けて必要なことは何か。

 「まずは国内需要を軌道に乗せること。キャンペーンを単なるカンフル剤として終わらせず、安定して人が動く流れを定着させる。これだけのダメージを受けているので、一定期間の財政的な支援も必要だ」

 「元々抱えていたオーバーツーリズムの問題や旅行の在り方を見直す必要がある。格安航空に乗って宿泊だけして帰るという旅行スタイルではなく、現地の食事やアクティビティーを体験してもらう旅の在り方に変えていく必要がある。観光地での体験が次の旅行につながる。沖縄はアドベンチャーツーリズムやグランピングなど、屋外での観光に可能性がある。どういう体験をしてもらうかを掘り下げることが大事だ」

 「長期滞在や消費額の向上に向けて今のうちから準備する必要がある。沖縄の平均滞在日数はリゾート地としては短い。アジア人は長期休暇を取らないため、アジア市場の依存度が高いと長期滞在は難しい。滞在日数や消費単価が高い欧米人を沖縄に呼べるといいが、彼らはほとんど東南アジアに行き、沖縄までは寄らない。日本の一部の地域としてではなく、独立したリゾート地として認識してもらう必要がある」

 ―オンラインツアーなども出てきているが、旅の形態に変化は起きるか。

 「現地で見たり食べたり体験するという旅の本質は変わらない。実際に行けない場所を補完的に見るなど、デジタルで可能になることはある。店頭での旅行相談がリモートでも可能になり、現地の情報を直接現地からオンラインで伝えられるなどデジタルの利用は大きくなる」

 ―今後の見通しはどうか。

 「来年1月末でGo Toトラベルが終了した場合、2月以降は全く見通せない。現在の需要の動きは、キャンペーンが後押ししているのは間違いない。通常はキャンペーンはあまり長くやってはいけないが、この特殊な状況の中だとリハビリが必要だ。軌道に乗るためには半年くらいは続ける必要がある」

(聞き手 中村優希)