米兵への養育費請求、目の前にいても泣き寝入り多数…日米地位協定の壁、ここでも


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 ハワイ州の裁判所が、沖縄の女性との間に生まれた子供の養育費支払いを米兵に命令した。

 米国の養育費回収システムは親が米国在住の場合のみ利用でき、養育費は給与から天引きされることが多い。在日米軍人や軍属の身分は日米地位協定で保障されており、同協定に軍人や軍属の給与差し押さえに関する取り決めはない。養育費回収システムは米国外では適用されないので、沖縄では相手となる米軍関係者が目の前にいても請求できず、泣き寝入りしている母親が多いとみられる。

 日米地位協定第18条9項(b)は「強制執行をするべき私有の動産があるときは、日本の裁判所の要請に基づきその財産を差し押さえて当局に引き渡さなければならない」とする一方、給与の差し押さえに関する項目はない。

 県は「米軍人に支払われる給料などに対して、ボン補足協定(米国とドイツで結ばれる地位協定)と同様に、わが国の裁判所の差し押さえ、支払い禁止などの強制執行を可能にする旨を明記する必要がある」として、地位協定の改定を求めている。

 国際家事相談支援「ウーマンズプライド」のスミス美咲代表は「沖縄ではフェンスを隔てて近くに住んでいるため、養育費を支払っていないのに子どもの顔を見に来る米軍関係者もいる。国と国の条約という形ではなく、在日米軍と日本政府間で養育費に関する協定が必要だ」と指摘した。

 スミス代表は沖縄国際大学で国際私法を専攻し、米国の養育費回収システムの研究を続けている。県内外から米軍関係者と女性のトラブルの相談を数多く受ける。特に多いのは父親と子どもを法律上の親子関係と認める「認知」や養育費に関するトラブルだ。

 スミス代表は「将来、子どもが親を探すとき、戸籍に名前があれば探せるし国籍も選ぶことができる。相手が手続きをしなくて諦める人もいるが、国籍の選択は子どもに与えられた権利と選択肢だ」と述べ、認知と国籍取得の重要性を強調した。