最大規模、陸自が医療訓練 鹿児島・徳之島、負傷者搬送など 


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努

 【東京】陸上自衛隊西部方面隊は10月16日~11月5日に、南西諸島防衛を目的にした大規模訓練「2020年度方面隊実動演習」を実施し、鹿児島県の徳之島で過去最大規模の医療訓練を行った。医療環境が整っていない離島を舞台に負傷者搬送などの実地訓練を展開するのは初めてといい、島嶼(とうしょ)地域の戦闘を想定した取り組みが進んでいる。

 演習は大分県の日出生台演習場を、住民を避難させた後の「島」と見立て、上陸してきた相手に対し自衛隊が防御する想定で行われた。約1万6千人が参加した。徳之島では防災センターを「野戦病院」と位置付け、健軍駐屯地(熊本県)を拠点とする西部方面衛生隊が、戦闘地域からヘリで運ばれた負傷隊員を受け入れる医療訓練を行った。

 陸自は「自衛隊の空白地帯」とされてきた与那国島や宮古島、石垣島などに部隊を新設し、尖閣諸島への領海侵入など、海洋進出を強める中国を念頭に「抑止力」を確保する取り組みを進める。

 島嶼地域は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で、陸自は「負傷した隊員を島外に搬送するのにも時間がかかる」と指摘する。これまでは既存の駐屯地内で医療訓練をしてきたが、「衛生隊を離島で展開し実地訓練することで、駐屯地内の訓練では分からなかった課題や教訓を得ることができる」と今回の演習の狙いを語った。