バイデン氏勝利は沖縄経済にどう影響する? 専門家の見方


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 史上まれに見る接戦となった米大統領選挙を民主党のバイデン氏が制し、政権交代が実現することとなった。「米国第一主義」を掲げて「ディール(取引)」を繰り返してきたトランプ大統領の政策からどう変化するのか、沖縄経済への影響などについて県内シンクタンクに聞いた。

対アジア政策不透明/おきぎん経済研究所 野原長武 主任研究員
 

野原 長武主任研究員

 現在の沖縄経済は、新型コロナウイルスの大きな影響を受けている。大国アメリカのトップが代わるという世界経済への影響はもちろんあるが、沖縄へのダイレクトな影響はそれほどないだろう。

 為替相場は政権交代への不安を反映して、久しぶりに103円台まで円高になった。円高ドル売りの動きは急速に進んでいる。株価は高値だが、これはコロナ禍で消費できないマネーが投資に向かっていることを反映している側面が強く、安心感からの高値とは言いづらい。

 沖縄にとって円高は本来、インバウンドの客足を鈍らせることから警戒が必要だが、コロナ禍でインバウンドの見通しが立たない現状なので、この点でも短期的に大きな影響はないだろう。

 トランプ大統領は、アジアにかなり注目していたが、バイデン氏は対アジア政策の色がまだ見えづらい。米中関係も大きくは変化しないと思う。コロナ対策と経済振興のバランスに注目していきたい。


政策の予見性高まる/りゅうぎん総合研究所 久高豊 専務
 

久高 豊専務

 新大統領にバイデン氏が就任することで、沖縄への直接の経済的な影響は少ないと考えられる。ただ、政策が世界経済にプラスとなれば、当然ながら沖縄にも良い影響が出るだろう。

 バイデン氏は新型コロナウイルス対策に大型の予算を組むとしている。日本が財政出動を小さくすれば円高リスクが高まるので、きちんと対応してほしい。

 トランプ大統領との大きな違いは、予見可能性が高まることだと思う。政策面で次の方向性が見通せれば、投資も活発化することなどが期待できる。

 バイデン氏が大統領になっても対中強硬路線の流れは大きく変わらないと思うが、枠組みは以前のような多国間連携の形に戻るだろう。互いのGDPを削り合うような貿易戦争が収まれば、世界経済のマイナス要素が減少することになる。

 コロナ収束後に日本経済全体が上向けば、観光客の増加などの形で沖縄経済への波及も考えられる。一方で米国の経済が弱くなれば、世界経済にも影響を与える。手腕に期待したい。