休暇×仕事 広がる「ワーケーション」 沖縄で受け入れ施設倍増 課題は就業規則の変更


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利用者たちが共有する「コワーキングスペース」を紹介するKASHA okinawa広報担当のトムソン・ジョシュアさん=9日、那覇市久茂地

 新型コロナウイルスの流行を受けた新しい働き方として、旅先で休暇を楽しみながらテレワークを行う「ワーケーション」が注目される中、県内で受け入れ先が増加している。県内でワーケーションに対応した施設数は、2020年度に前年から倍増の40カ所に拡大する見込みだ。施設数と同様にワーケーションの利用客数も順調な伸びを見せている一方で、企業の就業規則の変更やセキュリティー問題などが今後の課題として浮上している。

 6月に那覇市久茂地にオープンしたシェアオフィス「Co―Works」は、順調な出だしで集客している。6月と10月の利用者数を比べると、約5倍の大幅増となった。運営する「KASHA okinawa」は、恩納村と宮古島の2カ所にそれぞれ民泊施設を管理しており、コワーキングスペースの利用者に宿泊の案内もできる。

 同社は本島中部や北部にもシェアオフィスの拠点拡大を視野に入れる。広報担当のトムソン・ジョシュアさんは「沖縄はワーケーション利用者に人気だ。コロナの影響で働く場所を問わないリモートワークが、よりやりやすくなっている」と説明する。

 コロナ禍により団体旅行の停滞が長引く中で、県内の既存の宿泊施設なども相次いで新たなサービスを打ち出している。

働きながら休暇を楽しむ宿泊プラン用の専用部屋を紹介する、ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄のセールス&マーケティングの木嶋朋子部長=5日、恩納村

 「海を見ながら仕事しよう」をテーマに、ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄(恩納村)は8月ごろから、宿泊プラン「オキナワーケーション瀬良垣島」の販売を新たに始めた。専用部屋にスキャン機能付きのプリンターやマイク付きヘッドホンなどを導入し、旅先でも仕事ができる環境を整えている。

 販売当初は県独自の緊急事態宣言が出ており、政府の「Go To キャンペーン」の対象から東京発着の旅行も除外されていたため、プランの利用客は少なかったという。9月からようやく数組の予約が入り、10月は1週間滞在した客も含めて約20~30人の利用があった。

 11月も順調に推移しており、プランの通年販売も計画している。同ホテルのセールス&マーケティング部長の木嶋朋子さんは「こんなに利用客が増えるとは想定していなかった」と驚きを隠さず「コロナ禍でも楽しめる滞在の仕方を提供し、国内客を誘致していきたい」と語った。

 ワーケーションの利用拡大には課題もある。旅先までの移動は、就業時間としてカウントされるのか、旅先でけがをした場合は労災対象になるのかなど、企業の就業規則の変更も必要だと指摘されている。

 政府は本年度から「沖縄テレワーク推進事業」を実施している。沖縄総合事務局商務通商課の長嶺さおり課長は「沖縄は花粉症がなく、冬も暖かいのでワーケーションに最適だ。長期的にみると、ワーケーションは企業立地につながる可能性もある」と強調し、制度面からも沖縄のテレワーク推進に力を入れていく考えを示している。