沖縄版シリコンバレーへ OIST核、規制緩和目指す 新沖振制度提言


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新たな沖縄振興のための制度提言について話合う県振興推進委員会の委員ら=10日、県庁

 県は10日、2022年度からの開始を目指す新たな沖縄振興のための制度提言(中間報告)を公表した。国内初とみられる「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進特区の創設や沖縄科学技術大学院大学(OIST)を核とした沖縄版「シリコンバレー」実現に向けた規制緩和措置、鉄軌道整備などの施策を盛り込んだ。実現すれば沖縄振興が大きく前進するとみられるが、財政難の国がどれほど受け入れるかは不透明だ。県は今後、内容を精査した上で国と調整に入る。

 目玉は玉城デニー知事が公約に掲げる「SDGs推進特区」だ。現時点の想定では、企業が作成するSDGs推進計画に基づき、県知事または担当大臣が計画を決定し公表する。初期投資額にかかる税の減免や事業経費の一部穴埋め支援を受けることができるとする。具体的にどのような計画が認可されるのか、そもそも同特区が認められるのかは今後の国との調整にかかっている。

 県企画調整課の担当者は「民間の取り組みやアイデアを広く行政サービスに採用させてもらいたい。離島振興や『島ちゃび』を解消するため、予算や税の減免で背中を押していく環境をつくりたい」と同制度の狙いを語った。

 OISTを核とした「イノベーションパーク特別地区」は、地区内で減免措置や規制緩和措置を施し、世界中からスタートアップ企業や起業家を誘致する狙いがある。お手本とするのは巨大IT企業が立地し、次々と革新的な企業が生まれる米シリコンバレーだ。一方、中には必ずしも沖縄だけの課題ではない提言もある。例えば新型コロナウイルス対策として、県内のエッセンシャルワーカー(観光関連事業者や社会維持活動に従事している人)への戦略的なPCR検査体制の確立に向けた財政措置や、デジタル技術を活用して暮らしやビジネスの変革を進める「デジタルトランスフォーメーション(DX)支援制度」だ。これらは全国で要望があり、課題となっている。

 喜舎場健太企画調整課長は「中にはオールジャパンの課題と捉えられるかもしれないが、沖縄には離島という地理的な大きな課題があるので特に措置が必要だ」と説明した。

 このほか、再生可能エネルギー活用促進を図るエネルギー安定供給支援制度や沖縄戦に起因する所有者不明土地の解消制度、国立自然史博物館の設立、島しょ型スマートモビリティー推進制度などの提言を盛り込んだ。提言は企画調整課のホームページで公表されている。