【深掘り】八重山への海自配備、実現可能性は? 尖閣巡り要請 政府は慎重姿勢


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尖閣諸島(資料写真)

 石垣市の行政区域にある尖閣諸島周辺海域で活動を活発化させる中国の動きを念頭に、八重山防衛協会が八重山への海上自衛隊配備を防衛省に要請した。尖閣諸島対応を巡り、自民党内で盛り上がりを見せる「防衛力強化」の議論にも、地元からの要望として影響を与える可能性もある。だが、いまだ反発がくすぶる市平得大俣への陸上自衛隊配備計画なども絡み、今回の要請に関しての実現性は未知数だ。

 自民党の国防議員連盟(会長・衛藤征士郎元防衛庁長官)は9月、与那国島に自衛隊の護衛艦などが入港できるよう整備を図ることを盛り込んだ提言をまとめ、政府に提出した。防衛協会の要請を含め、陸自配備の後を企図した動きがにわかに活発化している。

 安全保障政策に詳しい与党関係者は、先島地方での大規模な海自基地の配置は、艦船の整備といった基本的な機能がなく難しいとしつつ「補給拠点は欲しい。石垣港は大型の巡視船が寄港できる岸壁が整備されており、そこを使えば海自も補給できるのではないか」と話す。

 八重山防衛協会の関係者も補給拠点整備を想定しているとした上で「尖閣対応に当たっている海上保安庁の後ろには海自も控えていて、連携体制にあるのは周知の事実だ。先島に補給基地があれば、柔軟に対応できるようになる」と期待する。

 ただ、八重山での海自配備は進めにくい事情がある。海自が要員確保に苦しんでいることに加え、石垣市で整備途上にある陸自配備計画への反対の声がいまだ根強いことだ。

 要請を受けた防衛省は取材に対し、詳細なやりとりへの説明は避けつつ「今のところそういう(八重山への海自配備の)話はない」と述べるにとどめた。省内には、新たな基地整備問題がクローズアップされれば、駐屯地建設工事が進む陸自配備計画を巡る議論にも影響を与えかねないとの警戒感もあるとみられ、表向きは慎重姿勢に徹している。

 要請した防衛協会側も、要請内容に内部から異論はなかったが「(陸自配備が進む)時期だけに、慎重に進める必要がある」との認識は共有したという。

 一方で、協会関係者は「『なしくずし』という批判は当然あるだろうとの前提だ。だが、陸自配備で抑止力が保たれると考えるのは違うのではないか」と強調。「後は時の政権が考えることだが、地元の声として検討の足掛かりにしてほしい」と述べ、政府にボールを投げた形だ。
 (知念征尚、大嶺雅俊)