遺骨収集者、立ち入れず 糸満市米須の採掘場に「禁止」の看板 業者「自分たちで収集する」


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立ち入り禁止の看板が立ち、規制ロープが張られた現場。奥に見えるのが遺骨収集が行われていた山の斜面=8日、糸満市米須

 沖縄戦の激戦地で、戦没者のものとみられる遺骨が見つかった糸満市米須の「魂魄の塔」近くの石灰岩採掘場で、業者が現場一帯を立ち入り禁止にし、県や遺骨収集ボランティアらによる遺骨の収集を拒んでいる。業者は本紙の取材に「自分たちで遺骨収集をする」と説明する。現場周辺の地中には数多くの遺骨があるとみられ、遺骨収集の関係者は「十分な収集がされないまま、石灰岩や土砂が採取されるのでは」と懸念する。

 魂魄の塔近くの斜面では、沖縄総合事務局から施業案の認可を受けたとして、鉱山権の所有業者が採掘準備のため木の伐採など作業を始めた。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんやメンバーは、同じ斜面で遺骨収集を行う。先月末から今月はじめにかけて、斜面の頂上付近にある岩の下から、沖縄戦当時のものとみられる下あごなど、遺骨を発見した。近くでは別の人のものとみられる歯や手の骨も見つかった。

 具志堅さんや関係者によると今月6日、業者に対し敷地に立ち入り遺骨収集を行うと連絡したところ、立ち入り禁止を告げられたという。8日には、それまでなかった「立入禁止」の看板が設置されているのを確認した。

 業者は本紙の取材に「安全管理に責任が持てないので立ち入りを禁止した。事前に相談すれば、その都度立ち入りの許可を検討する」と語った。現在、工事は止めていて、採掘の開始前までに遺骨を収集するという。業者は「自分たちで、手彫りで(遺骨を)探すしかないと考えている」と答えた。

 一方、遺骨収集には専門性の高い技術が必要で、遺骨収集関係者からは「探しきれるわけがない」との声も上がる。

 現場のそばには「シーガーアブ」と呼ばれる大きな自然壕があり、歩兵第64旅団団長の有川主一少将(当時)らが自決した場所として知られる。県戦没者遺骨収集情報センターによると、壕内部は構造など未解明な部分が多いという。

 具志堅さんは「遺骨を探して見分けるのは簡単ではない。作業も慎重に行う必要があり、丁寧に1体ずつ収集できるのか疑問だ」と話す。業者が現場を立ち入り禁止にしたことに関して、同センターは「推移を見守る」との考えを示した。