自転車の成海綾香(20)=普天間中―鹿児島・南大隅高―鹿屋体育大2年=がことしに入り全日本大学大会、トラックの全日本選手権と数々の大会で入賞し、急成長を遂げている。ジュニア日本代表や全国大会優勝などの経歴も持つ兄2人の背中を追って競技を始めた。今では「私が(兄たち以上の)成績を出したい」ときょうだいへの競争心をたぎらせている。
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長兄の大地が自転車を始めたことをきっかけに、次兄の大聖、綾香もそのレールに乗った。幼少期からそろってトライアスロンにも出場し、中でも自転車は「兄がやっていたこともあり、一番楽しかった」。自然とのめり込んでいく。
兄を通じて、トラック競技のジュニア代表経験もある松井優佳選手と出会い、鹿児島の強豪・南大隅高へと進学。身長151センチと小柄で「ペダルへの力の加え方やスピードなどでは劣るところもある」というが、その分、スプリント力に磨きを掛けてきた。高負荷と低負荷の練習を交互に行うインターバルトレーニングなどを重ね、スプリント力を磨き、トップ集団からの逃げ切りなど得意とする部分を伸ばしてきた。
■転機
さらに大きく変わったのは、ここ1年のことだ。成海を急成長させた要因は何だったのか。
転機となったのは、昨年の全日本大学対抗選手権(インカレ)だ。希望種目、オムニアムのメンバーから漏れた悔しい記憶があった。それまでは「しんどくなると、ここまででいいか、とあきらめることが多かった」。だが、メンバー漏れの悔しさが眠っていた闘志を呼び起こす。「来年は絶対自分が出たい種目で結果を残したい」。ことしは脚が動かなくなるまでこぎ続け自らを追い込んできた。その結果「男子の練習にも長い間ついていくことができるようになった」と練習に対する姿勢も変わり、体力面も大幅に向上。
新型コロナウイルスで中止となったインカレの代替として行われた、10月の全日本大学大会はロードレースで3位入賞を果たし「この1年の成果が出た気がした」。前年のインカレでは11位で、雪辱を期す種目でもあった。序盤からペースを上げトップ集団に食い込んだ。そのほかに出場した16キロマディソンでは準優勝、昨年メンバー漏れで出場できなかったオムニアムも3位入賞と、見事リベンジを果たした。
■代表選手に肉薄
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11月上旬の自転車トラック種目の全日本選手権は、鹿児島県代表としてチームスプリントに出場。共に走る山本さくら、松井優佳はスプリント種目では国内大会で何度もタイトルを獲得しているベテランだ。今大会から2人一組から3人一組に変更され、“助っ人”を任された。
成海は早くトップスピードまで加速させる役割を担う1走を務めた。練習でのチームベストは1分13秒。だが、本番は1着の日本代表が出した1分9秒台に迫る1分11秒09とチーム最速をたたき出した。「一番心配だった2走へのつなぎもうまく加速できた」と重圧を乗り越え、納得のいくレース展開だった。
今季も大会はまだ残っているが、成海の中では既に来季の目標が定まっている。「インカレのマディソン、オムニアム、ロードに出場し、3種目制覇を狙う」。伸びしろ無限大の20歳のレーサーは、きょうもペダルをこぎ続ける。
(上江洲真梨子)