「今度は自分が助ける番」車いすの男性が写真詩集に込めた思い 独自の世界観を1冊に


社会
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写真詩集「気まぐれ散歩 車輪のおもむくままに」(下)を出版する(下段中央から反時計回りに)喜納盛安さんと制作に協力した伊波七代さん、仲宗根千晶さん、島袋昌斗さん=10日、那覇市泉崎の琉球新報社

 脳性小児まひで重度の身体障がいがある喜納盛安さん(51)=那覇市=が、自身で撮影した写真と自作の詩をまとめた写真詩集「気まぐれ散歩 車輪のおもむくままに」を限定300冊出版する。約10年撮りためた写真で、独自の世界観を表現した。これまで支えてくれた人々へ恩返しの気持ちを込め、売り上げの一部は福祉施設に寄付する考えで「気軽に楽しんでほしい」と呼び掛けた。

 喜納さんは生まれつき肢体不自由で、車いす生活を送る。昔から写真を撮ることが好きだった。山や海、変わった場所や気になるもの―。いろいろな風景を見つけては、車いすに備え付けたカメラのシャッターを切った。

 これまで幼なじみと共に写真展などを開催してきた。「個人として、何か自分にできることはないか。社会に出て誰かを支援できるようになりたい」。友人の伊波七代さん(39)に相談を持ち掛け、長年喜納さんのヘルパーを務める島袋昌斗さん(35)と3人で任意団体「スマイルスター」を結成し、写真詩集の制作に乗り出した。

 レンズの向こうに見た世界に短い詩を付け、一つ一つの作品に思いを込めた。福祉業界に携わる有志で構成する任意団体「フクシカケル」(仲宗根千晶代表)が出版企画に協力し、完成までに約10カ月をかけた。

 伊波さんは「感性豊かな“モーリーワールド”へようこそ。写真に添えられた詩を読むと『こんな意味が込められていたんだ』と想像が膨らむ発見がある」と語った。

 シャイな性格だという喜納さん。昔は雨が降ると外出がおっくうになっていた。写真を通じ自分の世界観を表現する中で「気持ちはだんだんと柔らかくなった」。37歳を過ぎた頃から念願だった1人暮らしを始めた。表情や声が明るくなり、自身の中で起こる変化を感じている。

 売り上げの一部は、福祉施設などに寄付する考えだ。「今まで誰かに助けられてきた。今度は自分が助ける番」。喜納さんの新たな挑戦が始まっている。

 現在、写真詩集の注文を受け付けており、12月から発送を開始する。1冊1650円(税込み)で、郵送は別途370円。

 注文と問い合わせはフクシカケルの仲宗根さん(電話)090(1947)3679。
  (吉田早希)