海の豊かさを守ろう【SDGsって? 知ろう話そう世界の未来】14


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沖縄を象徴する青く輝く海。サンゴ礁など世界有数の生物多様性を誇る海は、地域によっては伝統行事の場であり、沖縄観光にとっては観光客が求める重要な資源でもある。一方で、宅地や商業地を造る埋め立てのため、自然海岸は限られた地域にしか残っていない。SDGs(持続可能な開発目標)のゴール14は「海の豊かさを守ろう」。地域の暮らしと海浜の豊かさを両立させる方法を模索して、道路建設に伴う埋め立て計画を変更させた浦添市の「うらそえ里浜・未来ネットワーク」、農地の改善で赤土流出を防ぎ、サンゴ礁の海を守る恩納村の取り組みを紹介する。

地域の宝 子どもたちへ

うらそえ里浜・未来ネットワーク

 2018年に浦添市西海岸関連道路が開通し、サンエーパルコシティが開業した浦添西海岸地区。目の前には遠浅な海が広がり、干潮時にはイノー(礁池)が顔を見せる。地元の人たちにとってカーミージー(亀瀬)周辺は宝の海だ。その恩恵を受けて暮らしてきた。浦添市の「うらそえ里浜・未来ネットワーク」はこうした海を「里浜」と呼び、地域の宝として未来の子どもたちに残すことを目標に活動している。

 里浜の保全活動は、地元・港川自治会が04年度から取り組んできた。港川の人たちはカーミージーで潮干狩りや海遊びを楽しんできたが、戦後は新興住宅地として発展する中で海の存在感は薄れてきた。

 里浜活動は子どもたちに海の素晴らしさを伝え、継承していくことが目的だ。港川小と連携し、児童向けに生き物観察会やカヌー体験などを開催している。海辺が地域の高齢者と子どもの交流の場ともなり、自治会活動も活性化していった。

「うらそえ里浜・未来ネットワーク」のビーチクリーン活動で集めたごみを前に記念撮影する参加者=9月25日、浦添市のサンエー浦添西海岸パルコシティ前

 活動は行政を動かし、道路建設に伴う埋め立ては07年、一部橋梁(きょうりょう)化に変更。17年には「里浜の保全及び活用の促進に関する条例」、18年に保全・活用ガイドラインも策定された。

 そうした活動を自治会以外にも広げたのが「うらそえ里浜・未来ネットワーク」だ。地元の企業などを巻き込み、ビーチクリーン活動などを展開している。ことし9月にはパルコシティの社員やテナントに勤める店員らが参加して清掃した。

 浦添西海岸は、米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の移設先としてまた注目を集めている。同ネットワーク代表理事の田邊治通さんは「市民一人一人がこの海を見て、未来に残していくためにはどうしたらいいのかを判断して行動してほしい」と話した。

(荒井良平)


漁・農つながり環境保全

「サンゴの村」恩納 赤土対策

 「サンゴの村宣言」を掲げ、国のSDGs未来都市でもある恩納村は、漁業や観光業を支えるサンゴの海を保全し地域づくりに生かそうと取り組む。その一つが陸の赤土対策だ。海で働く村漁業組合の若者が陸で赤土対策に関わるなど、陸と海を関連させた地域全体での取り組みが進む。

 植物などに覆われていない土壌は雨に打たれて表面の粒子が崩れ、水と一緒に流れ出す。県によると流出源の8割は農地で、防止には農地の地表を覆うことが鍵になる。

 恩納村では拠点産地に指定されている観葉植物の畑が、下草を除草して裸地状態になっているという。村は2018年度、収穫後のサトウキビの葉がらで、畑を覆う事業を始めた。葉がらを圧縮した1個300キロもの塊を製糖工場から運び、電動のこぎりなどで裁断して敷き詰める。

赤土流出防止へ、観葉植物の畑にサトウキビの葉がらを敷き詰める作業をした恩納村漁業協同組合青年部のメンバーら(提供)

 効果はてきめんだった。葉がらで覆った畑では真っ赤に染まっていた雨水が透明に。地表が覆われるため雑草が生えにくくなり、除草作業や除草剤の使用量が減少した上、土壌が保湿されて植物の成長も良くなったという。

 この作業に活躍したのが村漁協青年部の若者たちだ。一輪車で葉がらを運び敷き詰める重労働を総勢16人が引き受けた。取り組みを進める村農業環境コーディネーターの桐野龍さんは「大漁」と書かれたポロシャツを着て畑に立つ若者たちの写真を前に「海と陸をつなぎ、村全体で行う環境保全はまさにSDGsだ」と目を細めた。

 村は裸地の緑化や畑の縁への植栽、これらの植物を利用した養蜂や新製品づくりと、持続可能な対策に向けて多彩な「種まき」をする。種を育てるには人手や予算が必要だ。「きれいな海は観光の大きな資源でもある。多くの村民や県民に赤土問題を『自分ごと』と感じてほしい」と桐野さんは願った。

(黒田華)


生態系守るルール作りへ

 国土地理院によると、沖縄県の面積はことし7月現在で2282.59平方キロメートルで、前年7月より1.59平方キロ増えた。ほぼ埋め立てによる面積増加で、その分、沿岸の海が失われた。埋め立てはその周辺でも潮流変化や水質悪化が起き、生態系への影響は大きい。

 この増加分には那覇空港第2滑走路のための埋め立てが含まれる。

 県内の埋め立て地はほかに浦添市西海岸、豊見城市豊崎、北谷町美浜など県内を代表する観光地や商業地となった所も多い。

 漁業だけでなく、観光の重要な資源ともなる海。沖縄県の「生物多様性おきなわ戦略」では水辺の開発と利用へ「新たなルール作りが必要」としている。

SDGsとは…
さまざまな課題、みんなの力で解決すること

 気候変動、貧困に不平等。「このままでは地球が危ない」という危機感から、世界が直面しているさまざまな課題を、世界中のみんなの力で解決していこうと2015年、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が決められた。世界中が2030年の目標達成へ取り組んでいく。

 「持続可能な開発」とは、資源を使い尽くしたり環境を破壊したりせず、今の生活をよりよい状態にしていくこと。他者を思いやり、環境を大切にする取り組みだ。たくさんある課題を「貧困」「教育」「安全な水」など17に整理し、それぞれ目標を立てている。

 大切なテーマは「誰一人取り残さない」。誰かを無視したり犠牲にしたりすることなく、どの国・地域の人も、子どももお年寄りも、どんな性の人も、全ての人が大切にされるよう世界を変革しようとしている。

 やるのは新しいことだけではない。例えば物を大切に長く使うこと。話し合って地域のことを決めること。これまでも大切にしてきたことがたくさんある。視線を未来に向け、日常を見直すことがSDGs達成への第一歩になる。