日米韓で協力し遺骨の特定を 「ガマフヤー」の具志堅氏 厚労省に公開質問状


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沖縄戦戦没者遺骨のDNA鑑定による身元特定などを求めている「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さん=2019年7月、那覇市

 日米の激戦地だった、南太平洋キリバスのタラワ環礁の島で収集された遺骨について、遺品など個人情報につながる資料がない中で、厚生労働省が今年8月と9月に、DNA鑑定で日本人2人の身元を特定した。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんは、同様に遺品などのない沖縄戦戦没者の遺骨についても、身元特定につながると期待を寄せている。

 厚労省によると、遺品や戦没者名簿がない遺骨のDNA鑑定は、沖縄では2017年度から行われている。キリバスや硫黄島では本年度から新たに開始した。米政府は昨年、同国の民間団体が現地で収集したアジア系遺骨162人分の検体を、日本と韓国に提供した。厚労省が遺骨と照合するための検体提供を遺族に呼び掛け、62人から申請を受け鑑定を進めた。

 その結果、今年8月と9月に1人ずつの身元特定に至った。遺品や埋葬名簿のない遺骨の身元が特定されたのは初めてだった。韓国側も韓国人1人の身元を特定したという。

 具志堅さんは15日、厚生労働省に対し、身元が特定された日本人2人の鑑定結果の詳細や、タラワと沖縄戦戦没者で鑑定手法の違いがあるのか、沖縄戦遺骨の身元を特定するため、日米韓の科学者の協力を進めることなどを提言する、5項目の公開質問状を出した。

 厚労省の担当者によると、タラワの遺骨の鑑定は沖縄の遺骨や他の地域と同様に、厚労省が契約を結ぶ大学や機関で実施されたという。担当者は「鑑定のやり方は同じだ。地域で差をつけることはない」と答えた。当時の日本軍の記録では、タラワの日本側死者は約4200人で、沖縄戦の死者数に比べて少ないことも特定に至った一因との見方を示した。

 一方で、沖縄戦戦没者遺骨の身元特定に至らない理由として、遺族の申請者数が少ないことや、遺骨の状態が悪く、DNAの一部が壊れていることなどを挙げた。

 厚労省によると、沖縄戦戦没者遺骨のDNA鑑定には、これまで県内外から766人の遺族から申請があり、84体分の遺骨と照合が行われたが、特定には至っていない。厚労省は県が保管していた700体に広げて鑑定を実施する予定で、引き続き遺族にも申請を呼び掛けるという。