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持続化給付金を狙う「貧困ビジネス」 ヤミ金業者の甘い誘いで不正受給、相談4件


この記事を書いた人 Avatar photo 高辻 浩之
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 新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した個人事業者らに支払われる持続化給付金を巡り、5月末~10月中旬までに県消費生活センターに寄せられた持続化給付金の関する相談のうち、無許可で貸金業を営む「ヤミ金業者」などの借金相手から不正受給を持ち掛けられたという事例が4件あることが分かった。消費者生活に詳しい専門家は「手続きが簡略化された給付金の制度を悪用している。立場の弱い人たちの窮状に乗じ、金を巻き上げる貧困ビジネスの側面がみえる」と指摘する。

県消費生活センター「誘い乗らないで」

 県消費生活センターによると、持続化給付金の不正受給そのものに関する相談は計40件に上るという。本紙の取材でも、県内でヤミ金業者らが不正受給を持ち掛け、受け取った給付金がヤミ金業者ら反社会的勢力に流れている実態が分かっている。いずれも手数料名目に加え、借金返済分の取り立てを理由にしてヤミ金業者に渡り、受給者本人の手元にはほとんど残らないという。

 県消費生活センター担当者は「不正受給が発覚すれば、国も当然のように全額返済を求めてくるので、借金がある人の状況は一層悪化するだけだ。誘いには乗らないでほしい」と注意喚起した。

 沖縄県の困窮世帯の割合は約25%と高く、全国平均の2倍近くとされており、消費者法などに詳しい安里長従司法書士によると、全国的にも沖縄はヤミ金業者らにターゲットにされる傾向があるという。安里さんは「非正規雇用者や不安定な雇用環境にある人たちはコロナ禍で収入が減少し生活をつなぎ止めるためにぎりぎりの状態だ。ヤミ金業者は手続きが簡素な給付金に目を付け、返済の滞った人らに不正受給させて、金を回収するシステムを構築している。困窮者が受け取るべき給付金が巻き上げられている」と指摘し、対応が急務だとした。

 持続化給付金を巡っては、沖縄タイムス社の元社員の男が不正に受給したとして詐欺容疑で県警に逮捕された。県警は県内で不正受給が横行しているとみて、全容解明に向け調べを進めている。 

(高辻浩之)