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県記録へ急加速「絶対塗り替える」 陸上400障害・津波愛樹 走り突き詰め成長<ブレークスルー>


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日本選手権の女子400メートル障害予選で最終ハードルを飛び越える津波愛樹=10月2日、新潟市のデンカビッグスワンスタジアム

 陸上の女子400メートル障害で県歴代2位の記録、58秒90を持つ津波愛樹(20)=中部商高出―福岡大3年。10月に新潟市で開かれた日本選手権に初出場を果たすなど、めきめきと力を付けている。今季の全日程を終え、冬季トレーニングでは大学生活の集大成となる来季に向け、スピードとスタミナにより磨きをかける。目標とする県記録まであと0・38秒。「絶対に塗り替えたい」と決意を固める。 (長嶺真輝)

■適した歩数

 高校時代は当時目標としていた1分の壁を突破できなかったが、大学1年で早速59秒台に突入。昨年9月には日本学生対校選手権で自身初の58秒台となる58秒92を記録し、一気に県記録の58秒52に迫った。今年9月の日本学生選手権では自己ベストを58秒90に伸ばした。日々の走り込みで鍛えたスピードやスタミナはもちろんだが、競技者の中で小柄な150センチの体格に合った走りを模索してきたことに成長の秘訣(ひけつ)がある。

 10台のハードルを越える400メートル障害はスムーズに走りきるリズムが必要なため「(ハードル間を)自分に合った歩数で行くのがいい」と理想を語る。高身長の選手は歩幅が大きく序盤を15歩で駆けていくというが、自身は「15歩はできない。16歩だとスピードが上がる分、後半がもたなくなる」と17歩が最もしっくり感じるという。無理のない走りで「17歩で粘れるところまで粘る」ことでレース中の減速幅を減らし、トップ選手たちと渡り合う。

 記録を伸ばす要因がもう一つ。以前は自身にとって「逆足」となる左足踏み切りを苦手としていたが、前回の冬季練習で反復し「2年の時よりも徐々に自然と足が出るようになっている」と改善を実感している。歩数が増えて逆足が必要になる終盤でも減速を防ぐことができるようになり、今後も「左右の踏み切りで差のない走りをつくりたい」と意気込む。

■兄、仲間から刺激

成長の要因や今後の目標について語る津波愛樹=10月30日、豊見城市内

 今季はコロナ禍で大会や部活動が中断する異例のシーズンとなった。自粛期間に助言を求めたのが、10月の日本選手権で初優勝を飾り、東京五輪の出場も期待される走り幅跳びの兄・響樹(那覇西高―東洋大出、大塚製薬)だ。椅子に片足を乗せてのスクワットやチューブを使った体幹トレーニングなどを教わり、体づくりに注力した。普段から技術面でも多くのアドバイスをもらうという。

 大学の仲間からも日々刺激を受ける。同級生の児玉芽生が日本選手権女子100メートルを制するなど、近年スプリント種目を中心に飛躍が著しい福岡大。「本当に同期がすごい。『負けられん』と思うし、刺激になる」と奮い立つ。

 一方、初出場となった日本選手権は悔しい結果となった。自己ベストの更新を目標に臨んだが、300メートル付近で体が重くなり59秒48で予選敗退。「自分では気付かなくても緊張していたんだと思う」と振り返る。終わった直後には「大舞台で自分の力を出せないところが、今のあなたの力」と先輩から精神面の弱さを指摘された。「もう一回ここで戦いたい」とすぐに前を向き、成長を誓った。

 現在の県記録58秒52は1998年に当時筑波大の新地さゆりが樹立したタイムで、22年も塗り替えられていない。普段はおっとりとした空気をまとう20歳だが、9月に自己ベストを更新した際を思い返して「県記録は近いのに、届かない。めっちゃ悔しかった。絶対に塗り替えます」と内に闘志を秘めている。大学在学中の目標は、日本選手権で入賞も見込める57秒台。国内トップ選手の仲間入りを見据える小さなスプリンターの活躍から、目が離せない。