[日曜の風・室井佑月]GoToキャンペーン 国の劣化は頭から


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 18日の会見で、日本医師会の中川俊男会長は、コロナ感染拡大と「Go Toトラベル」の関連性を記者に問われ、「『Go Toトラベル』自体から感染者が急増したというエビデンスはなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いないと私は思っている。感染者が増えたタイミングを考えると関与は十分しているだろう」と語った。

 中川さんは11日にも会見で、「第3波と考えてもいいのではないか」「非常に切迫した状態」と危機感を訴えていた。

 でも、政府の対応は鈍い。さすが、日本学術会議へ法律違反の人事介入をしようとする人たちである。専門家の意見など聞く気はないのだろう。彼らが重宝するのは、自分たちの意見と合わせてくれる専門家だ。

 「Go Toキャンペーン」は菅政権の肝入り事業であるし、まるで「Go To」を中断させれば、その失敗があたしたちにバレると恐れているようだ。

 思い返せば、菅義偉首相は10月26日の所信表明演説で、「(コロナの)爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と経済を守り抜きます」。

 そう力強く語っていた。が、それは嘘であったと思われても仕方ない。感染は防げなかったし、感染の関与が疑われる「Go Toキャンペーン」の検討もされないとすれば。

 もっともっと遡って思い返せば、そもそも「Go To」は8月半ばから開始される予定であったが、一カ月前倒ししてはじまった。赤羽一嘉国土交通相は先行してはじめた理由について記者に問われ、「コロナ禍の影響を受けつつも、(国民は)旅行への熱い思い、熱い期待がある」と答えたのだった。

 じつはあたしはこれを聞いても、あまりびっくりしなかった自分にびっくりしたので覚えている。

 これと似たような発言はたびたびされてきたでしょう? 東京五輪をなにがなんでも開催しようとする、森喜朗会長や安倍晋三元首相から。

 この国の指導者の発言がその程度だ。この国の劣化といっていいだろう。

(室井佑月、作家)