「娘の苦しみ忘れぬ」わいせつ被害16歳死亡 母、教師の謝罪なく怒り


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仏壇に供えられた娘さんの誕生日を祝うケーキ=2019年5月、那覇市の自宅(提供)

 2013年11月に部活動の副顧問だった40代男性教諭から、キスをされるなどのわいせつ行為を受けた当時中学3年の女子生徒が、高校進学後の14年12月に自ら命を絶っていたことを巡り、母親(41)が22日までに琉球新報の取材に応じ、悲痛な思いを打ち明けた。「娘の苦しみを覚えておきたかった」。女子生徒が亡くなって約6年が経過する現在も、当時の傷が癒えることはない。

 女子生徒が物心がついた時から、相手の気持ちを考える大切さを伝えてきたという。明るく活発で、多くの友人に囲まれ「とてもいい子に育ってくれた」。スポーツが好きで、中学校では部活に汗を流した。

 加害教諭のことも「恩師」「お父さんみたいな存在」と慕っていた。キスをされるなどわいせつ行為を受けたことに、母親は「ただただ信じられなかった」と声を落とした。

 その後、女子生徒と事件当時のことを話すのは避けた。「直接聞いて本人の気持ちを傷つけることが怖かった」。事件のショックから、女子生徒は1カ月で7キロほど体重が落ち、学校を欠席することもあった。

 高校進学後は表情も明るくなったように見えた。しかし高校1年の秋ごろ、両手の甲にかきむしったあざがあることに気付いた。亡くなる約1カ月前には、精神科の主治医から自殺願望が強いことが伝えられていた。「被害を受けた時と同じ季節が巡り、思い出すこともあったのかもしれない」と声を震わせた。

 女子生徒の死後、母親は精神的に不安定となり、2カ月にわたり精神科に入院した。退院後も、外出はせず自宅にこもる日が続いた。遺骨を置く仏壇の前から離れることができなかった。

 死後2年半ほどが経過した頃、一通の手紙が届いた。当時の加害教諭からだった。「『教え子が亡くなってしまい残念だ』というような内容だった。謝罪の言葉はなく、込み上げてくるのは怒りだけだった。わいせつ行為に対して、これまで一度も謝罪に来たことはない」と憤った。

 友人の誘いでサークルに顔を出すなど外出するようになり、母親の体調は徐々に回復した。職場の同僚からの勧めで、今年9月から自身の気持ちを整理する目的でブログを書き始めた。

 それでも、やるせない気持ちが募る。「娘を守り抜くことができなかった。加害者は『たかがキス』と思っていても、被害を受けた側は深い心の傷を負う。未成年の立場ならなおさらだ。同じような被害が二度と起こってほしくない」と沈痛な表情で訴えた。


 さまざまな団体や組織が子どもや若者らの悩み相談に電話やインターネットで応じている。主な窓口は次の通り。

▽チャイルドライン(0120)997777

▽子どもの人権110番(0120)007110

▽24時間子供SOSダイヤル(0120)078310

▽日本いのちの電話連盟(0570)783556

▽沖縄いのちの電話098(888)4343

▽NPO法人BONDプロジェクト070(6648)8318