「性被害4分の3が顔見知り…訴えぬ被害多い」「学校に2つの死角、ケア最優先に」識者談話


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 中学校の男性教諭からキスをされるなどのわいせつ行為を受けた女子生徒が、高校進学後に自ら命を絶っていたことが分かった。識者に学校と性犯罪について聞いた。

◆高里鈴代代表 強姦救援センター・沖縄(REICO)

高里鈴代代表

 被害に遭っても、声を出せない、拒否もできないのが被害者を取り巻く実態だ。性被害の場合、被害の4分の3は見知った人によるもので、お互いを知る間柄だからこそ、被害を訴えることができないケースも多い。

 2017年7月、刑法の性犯罪に関する規定が110年ぶりに改正され、強姦罪の名称が「強制性交等罪」に変わった。法定刑が引き上げられたほか、起訴するには被害者の告訴を必要とする「親告罪」がなくなった。今回の事件当時もあった親告罪は明治時代の制定から残るもので、被害を訴えたとしても、被害者の声を信用して受け止める体制が十分ではなかった。被害者の口を封じる役割をしていたといえる。

 一方、改正後もかつての強姦罪と同様に、加害者による暴行や脅迫がないと、強制性交罪が成立しない「暴行・脅迫要件」が残る課題もある。現在、見直しを議論する法務省の検討会も始まっている。

 今回の事件で被害者には何の非もない。

 自分の勢いをセーブする力がなかった加害者の問題が最も大きい。

 相手を尊重していたならば、決してできない行為だ。被害を受けた側が沈黙し、その人生に深い影響を及ぼしているのが現状だ。

◆村末勇介准教授 琉球大大学院教育学研究科
 

村末勇介准教授

  学校などの教育の場で起こる、性的な暴力などを表すスクール・セクシュアルハラスメントは、生徒同士や教師と生徒など身近な人が被害者、加害者になる。性被害は、先生や友達などに知られたら恥ずかしいという意識が働き、「自分が悪かったんだ」と被害に遭ったことを隠してしまう傾向がある。実際に学校での性被害発覚は第三者からの通報が多い。

 学校には、「学校で犯罪が起こらない」という心理的死角と、教室や準備室など2人きりになれる密室があるという構造的死角がある。二つの死角によって性暴力が起こる。

 被害者は語れるところまでしか語ることができない。養護教諭や親などがゆっくり話を聞いていくことで真実が語られる。学校は被害者の心のケアを最優先にし、「先生に迷惑を掛ける」や「周りに知られたくない」などの呪縛を解かなければいけない。

 わいせつ行為をした教員は懲戒免職などの処分を受けるが、他県で教員として働き、再度わいせつ行為をするケースが全国的に多い。文部科学省の懲戒免職処分歴検索システムの見直しによって、閲覧期間が40年間になるのは一歩前進だ。しかし、性依存症は再犯率が高く、依存症を乗り越えさせるプログラムを受ける必要がある。 (性教育)


 さまざまな団体や組織が子どもや若者らの悩み相談に電話やインターネットで応じている。主な窓口は次の通り。

▽チャイルドライン(0120)997777

▽子どもの人権110番(0120)007110

▽24時間子供SOSダイヤル(0120)078310

▽日本いのちの電話連盟(0570)783556

▽沖縄いのちの電話098(888)4343

▽NPO法人BONDプロジェクト070(6648)8318