GoTo判断を沖縄保留 ホテル「止めたら雇用守れぬ」医師「リスク分解を」


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予約や来店客を記したノートでキャンセルの状況を確認するBRIDGESの又吉真由美社長(中央)=24日、那覇市

 新型コロナウイルス感染症の全国的な急拡大を受け、政府が需要喚起策「Go To キャンペーン」の運用見直しに踏み切る中、玉城デニー知事は24日の臨時会見で「国の考え方を確認する」と述べるにとどめ、現時点で県としての判断を保留した。キャンペーンを利用して沖縄を訪れる観光客や飲食店の来客が増えつつあったことから、県内の事業者から「運用見直しは旅行マインドに水を差す」(観光関係者)などの声が上がる。玉城知事も経済活動に及ぼす影響を考慮し、キャンペーン見直しに慎重姿勢をにじませている。

 21日、菅義偉首相がキャンペーンの見直しに言及したことが伝えられると、那覇市久茂地の飲食店「えん沖縄」にはキャンセルの電話が相次いだ。企業や行政関係者が多く訪れるオフィス街に立地する。運営会社BRIDGESの又吉真由美社長は「行政や報道の一声でキャンセルが増える」と状況を語る。

■効果「これから」

 県が休業要請、外出自粛要請を出していた期間中の売り上げは前年比20~30%で推移してきたが、Go To キャンペーンによって回復してきていたという。同社が恩納村で営業する飲食店の11月の1日平均売り上げは前年比3割増になっている。

 又吉社長は「感染状況によって押さえ込みは大事だが、『行ってはいけない』ということではなく、感染しない環境づくり、意識づくりに力を入れてほしい」と語った。

 「Go To トラベル」キャンペーンによって、県内の入域観光客数は回復の兆しがあった。10月の観光客数は前年同月の約4割の水準まで戻り、多くの宿泊客がキャンペーンを利用するなど売り上げの下支えとなっていた。

 ホテルパームロイヤルNAHA(那覇市)の11月の客室稼働率は前年の7割台まで戻り、年末年始の予約も満室の日が続くという。宿泊客のほとんどがGo Toを利用している。

 高倉直久総支配人は「今(Go Toを)止められたら影響は大きく、雇用を守れない。ホテル内で感染拡大の例はない。県民が3密を避ける対策が重要だ」と話す。

 沖縄ツーリストの東良和会長は、県外から沖縄への個人旅行は年末から年明けにかけて前年の約8割程度まで回復する見通しだとして、「沖縄でのGo To トラベルは、これから効果が出てくるタイミングだ」と事業の継続を訴えた。

■「自粛と継続、分けて考えて」

 年末年始の売り上げ回復を頼りにする観光や飲食の事業者らは、行政の対応を注視している。

 玉城知事は24日の会見で、7月以降に県内で確認された感染者の経路を踏まえ、「県外からの移入例は3%程度だ。Go Toキャンペーンには観光、飲食関係者の期待が非常に大きいと認識している」との認識を示した。

 ただ、玉城知事は現状は感染の「第3波」だとして感染対策の徹底を呼び掛けてきた。飲食店支援の「Go To イート」のプレミアム付き食事券事業が県内で17日から始まったものの、新型コロナの感染拡大を受け、人数を4人以下、利用時間は2時間以内とするよう制限されている。

 県は国の方針や専門家会議の意見を受けて、今後の対応を見極める考えだが、新たな制限や運用見直しの可能性もある。

 感染対策と社会経済活動のバランスについて、中部病院感染症内科の高山義浩医師は「経済バランスの中でキャンペーンを維持するなら、Go To キャンペーンをひとくくりに議論するのではなく、感染リスクを分解し、自粛する部分と継続する部分を考えるべきだ」と指摘している。
 (池田哲平、中村優希)