障がい者の解雇急増に潜む根本的な問題とは? 識者の見方


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
春田吉備彦氏(沖縄大教授)

 昨今のコロナ禍に起因する景気悪化は、職に就けない人や失職の不安におびえる人を増やした。障がい者や疾病者、子どもなど、社会の脆弱(ぜいじゃく)な層に牙をむき、貧困層に悪影響を及ぼしている。

 障害者雇用促進法は、企業に2・2%の法定雇用率を設定し、その割合を満たす企業には障害者雇用調整金を支給し、未達成企業からは障害者雇用納付金の納付を義務付けて、経済的誘因(インセンティブ)によって障がい者雇用の量を拡大しようとしている。

 また、企業に「合理的配慮提供義務」を課しながら、障がい者の職務遂行能力の発揮を妨げる社会的障壁を取り除くアプローチも取っており、そこには障がい者雇用の質を高める狙いがある。

 だが、このような法的枠組みは、企業に採用段階で障がい者を正規社員で雇うことを義務付けるものではない。

 障がい者雇用においては非正規社員の割合が極めて高い。近年、行政は障がい者や病を抱え働く人、育児や介護責任を担う人、高齢者などが活躍する、「理想的な労働社会の実現」を目指して法策定を重ねてきた。その際に行政・企業の両サイドに足りなかった視点は、非正規雇用を安易に活用することを良しとした姿勢であった。この問題が今回、顕在化した。

 県外では非正規労働者を5年雇い続けると、正規社員に転換する労働契約法18条、非正規労働者の不合理な雇い止めを規制する同19条、非正規社員と正規社員の不合理な待遇に規制をかけようとする同20条に関する裁判例が幅広く争われ、それなりの成果を上げている。県内の労働関係者ももう少しこのような知識を広げていくべきではないか。
 (労働法)