真打の粋な話芸に引き込まれ 落語、漫才…充実の演目で観客を笑わせる 国立劇場寄席


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トリで「禁酒番屋」を演じる柳亭市馬=14日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわの企画公演「国立劇場寄席」が14日、国立劇場おきなわであった。真打の落語から、紙切り、漫才、寄席囃子(ばやし)実演と充実した演目で観客を笑わせた。

 仲入り前は柳家さん喬が、同日に北海道と沖縄の両方で一席披露できるほど移動が便利になった現代社会の話を枕に、「抜け雀」を演じた。

 宿の主人が一文無しの絵師から宿代代わりにと、ついたてにスズメの絵を描いてもらう。朝になるとスズメはついたてを飛び出し、主人を驚かせる。絵は話題になり、宿も繁盛。そこへ老絵師が現れ、ついたてに鳥かごを書いて去る。再び宿を訪れた絵師は、主人に話を聞いて老絵師が父親だったと気付き「親をかごかきにさせてしまった」と、自身の親不孝を悔やむ。

 さん喬は、役柄ごとに緩急の付いた話術で観客を引き込み、サゲ(落ち)までがあっという間だった。枕とサゲのつながりに気付いたときにはすでに高座を降りて、さっそうと舞台を後にしていた。

「抜け雀」を聞かせる柳家さん喬

 トリは柳亭市馬が「禁酒番屋」を演じた。酒の席の斬り合いで若い家来を失った藩主が、藩内に禁酒のお触れを出す。それでも酒をやめられない藩士は、酒屋に無理を言い、屋敷内に酒を運ばせようとする。酒屋は、酒をカステラや油に偽装して、なんとか門番の目を盗み運び込もうとするが、ばれて酒も飲まれてしまう。一矢報いようと思案した酒屋は、酒瓶に小便を入れて屋敷に向かう。

 市馬は、澄んだ声と粋な語り口でじっくりと噺(はなし)を聞かせた。ノドを鳴らして酒を飲む門番の姿は実にうまそうで、次第に酔いが回り舌足らずになっていく様も面白く、観客を大いに笑わせた。

 三遊亭歌奴は、流れるような話術で「片棒」を演じた。林家二楽は紙切りで、話芸で盛り上げながら、はさみと紙を操り、「桃太郎」「エイサー」「花火」「ガンダム」といった作品を作り、観客を驚かせた。ほかに、寄席囃子の実演解説はおはやしを井上りちが務め、柳家やなぎが落語「つる」、漫才を青空一風・千風が演じた。 (藤村謙吾)