造船や船舶修繕を手掛ける新糸満造船(糸満市、松浦快奏社長)はこのほど、山口県の研究開発会社・ナコスとの共同研究で、船底に付いた貝殻を主成分とする除菌液「ナノシェル」を開発した。貝殻類のアルカリ成分は抗菌に効果があり、除菌液は手指や室内の消毒用に使用する。通常は廃棄処分する貝殻をナノサイズまで粉砕する技術を両者で開発し、強アルカリの水溶液として利活用につなげた。
船舶修理をするには、船底に付着した貝殻を除去し、貝殻は産業廃棄物として処理しなければならない。ドラム缶(200リットル)当たり処理料が約15万円かかり、新糸満造船では年間約2トンの貝殻が出る。
「貝殻を有効活用できないか」と考えた松浦社長は、家畜のふん尿を浄化する目的で、2015年から貝殻水溶液の研究を始めた。貝殻水溶液を家畜のふん尿と混ぜると、ふんと尿が分離し、尿は滅菌され、水分として排水できる。抗ウイルスにも期待できるとして、現在は福岡県糸島市のカキ小屋から出た貝殻も使い、水溶液の量産体制を確立した。
ナノシェルは1本500ミリリットルで、税別2400円。糸満市物産センター遊食来(ゆくら)で販売している。
ナノシェルの基になる微粉砕貝殻水溶液についても、家畜のふん尿処理などさまざまな用途で使用できることから、販売の相談に応じるという。