インフルワクチンは「足りない」のか コロナ禍で接種希望者が悲鳴 医師の見方は


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那覇市が助成対象者向けに出している「お知らせ」や受託医療機関リストなど

 新型コロナウイルスとの同時流行を警戒してインフルエンザの予防接種を希望する人が増えた影響で、インフルエンザワクチンが不足している医療機関がある。りゅうちゃんねる取材班に「予約していた日の前日に病院から『ワクチンがなくなった』と言われた」(うるま市の70代男性)や、「『在庫切れ』の返事ばかり。入荷時期も未定と言われ心が折れた」(那覇市の30代女性)といった、読者の悲痛な声が寄せられた。

(阪口彩子、大城周子)

 新型コロナとインフルエンザは症状が似ており、重症化を防ぐためにも日本感染症学会は今季、従来の65歳以上の高齢者に加えて基礎疾患のある人、妊婦や小児へのインフルエンザワクチン接種を強く推奨している。自治体による接種費用助成の動きも広がる。那覇市は生後6カ月~小学2年生と妊婦を対象に、11月1日から来年2月末までインフルエンザ予防接種を全額助成している。

 取材班に連絡した女性は、11月初旬に2歳の長男の接種予約をしようとしたが複数の医療機関に断られた。ようやく予約できた医院で接種を済ませると、今度は「2回目は用意できない」と告げられた。小児は2~4週間を空けての2回接種が推奨されている。女性は10件以上問い合わせたが確保できず「(那覇市の)助成期間内に接種できるか心配」と語る。

 那覇市の担当課や同市医師会には連日、市民から問い合わせがあるという。ワクチンは医療機関ごとに購入しており、在庫状況を共有して把握する仕組みはない。県医師会の宮里達也副会長は「市町村による助成もあり、例年より(希望者が)増えて(需給の)バランスが合わなくなった可能性がある。ただし一時的なもので、高齢者や小児・妊婦などが優先されて後回しになる人たちも含め、接種できないという事態にはならない」と分析する。

インフルエンザ予防接種の様子(資料写真)

 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部によると、今季のインフルエンザワクチンは昨季より約12%多い約6356万人分を見込む。再入荷により接種できる医療機関は増える見通しだが、需要に供給が追い付くかは不透明だ。

 沖縄では例年、インフルエンザは11月ごろから流行が広がる。昨季は10月末から11月初旬にかけての報告数が「注意報レベル」の10人に近い7・12人だった。今季は0・05人と低く、現時点では発症が抑えられていると言える。宮里副会長は「新型コロナの影響で手洗いやマスク着用が定着し、今のところ流行の兆しは見られない。医療体制維持のためにも感染予防は徹底してほしい」と強調した。