[日曜の風・吉永みち子氏]コロナ再び拡大 伝統継承 誰が支援?


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 再びの新型コロナ感染拡大で、一時引いていたコロナ報道が大波となって戻ってきた。そして国民は「勝負の3週間」とか号令かけられているのだが、何に対してどんな勝負をしろと言われているんだかよくわからない。

 そんな中、今年の流行語大賞は「三密」に決まった。三つの密を避けてコロナから身を守っているうちに、さまざまな分野で身を滅ぼさざるをえない状況が生まれていて、本当に悲しい。再びの時短要求で年末を前に力尽きる飲食店が増え、行きつけの店もいくつか倒れた。

 飲食業界や観光業界だけが話題になっているが、国内の三味線の半数以上を生産している老舗三味線メーカーが廃業すると報じられたのは夏だった。三密忌避の影響で、夏までに延期・中止になった伝統芸能の公演は、確認されたものだけで3363件もあったとか。この老舗三味線メーカーは、8人組のロックバンド「和楽器バンド」が自分たちのイベントなどで募金を集めて800万円を寄贈して当面廃業が回避されたと聞いてひと安心したが、メーカーの廃業は伝統芸能の継承にも影響する重大な危機ではないのか。

 三味線に続いて、先日は福山琴が危ないというニュースも耳にした。地元の福山市が2年前の水害で大きな被害を受け、コロナが追い打ちをかけた。江戸初期に生まれた福山琴の危機を救おうと立ち上がったのも「和楽器バンド」だという。この国の文化庁って何してるんですかね? あ、自助で何とかしろというのがこの国の方針になったからか。

 伝統芸能ばっかりではない。東京でも創業100年以上の老舗の料理屋さんやお菓子屋さんが次々と廃業に追い込まれている。伝統の味もピンチに陥っているのだ。と、ここで急に心配になったのが沖縄銘菓の橘餅(きっぱん)。沖縄に行くたびに、必ず店に寄って買い求める大好きなお菓子なのである。

 琉球王朝時代からの伝統菓子で、とても手間がかかるため今は沖縄でも作っているのは一軒だけと聞いた。旅にも行きにくい時代だけれど、ネットという便利な“買って支援”の方法があった。私は土地の名物を取り寄せることに後ろめたさを感じるタチなのだが、この際、そんなことは言っていられない!

(作家)