音楽通し戦争考える 東京 ひめゆり題材に朗読劇


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東京芸術大学に保管されている東風平恵位氏の東京音楽学校への入学願書など=6日、東京都の東京芸術大学

 【東京】東京音楽学校(現・東京芸術大学)などの学生や卒業生が、戦時下の音楽作品を通して戦争の記憶の継承を考える企画「戦争の時代の芸術」のコンサートとシンポジウム(主催・同大演奏芸術センター、同大音楽学部)が6日、東京・上野の同大で開かれた。ひめゆり学徒隊を引率した音楽教師の東風平恵位氏(同校卒業)が作曲し、同学徒隊が愛唱した「別れの曲」を中心に物語が展開する、沖縄戦の朗読劇を上演した。

 朗読劇の題名は「消えた歌声 ひめゆりの別れ」。東風平氏と沖縄師範学校女子部(女師)、県立第一高等女学校(一高女)の女子学生がたどった沖縄戦を描いた。東風平氏が1943年に沖縄師範学校女子部の音楽教師に着任した後から10・10空襲、学徒動員、沖縄陸軍病院での卒業式、伊原第三外科壕の米軍によるガス弾攻撃、東風平氏の最期までをたどった。戦況が厳しくなる中、東風平氏が生徒に「死ぬな。絶対生きて帰るんだ」と強く訴える場面に、観客は引き込まれた。

ひめゆり学徒隊を引率した音楽教師・東風平恵位氏と、同学徒隊の女子生徒らがたどった沖縄戦を描く朗読劇=6日、東京芸大の音楽部内第6ホール

 台本、演出を手掛けた演出家の冨士川正美さんは「台本執筆にあたっては、ひめゆり平和祈念資料館の資料や生存者の証言を参考にした。東京から沖縄に戻った、若い音楽教師の東風平氏がたどった出来事を通して、沖縄戦を知るきっかけにつながってほしい」と話した。

 「別れの曲」のほか、学徒隊が卒業式で歌った軍歌「海ゆかば」や古賀政男作曲の「勝利の日まで」なども歌われた。会場には、東風平氏が東京音楽学校に提出した自筆の入学願書や、卒業試験で歌った独唱曲名が書かれた紙、1943年に撮影された卒業記念写真などが展示された。