最高級の客室で琉舞… 富裕層の獲得へ新商品 質の高いコンテンツ提供 ハイアット瀬良垣 


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ホテル最高級の客室で披露される琉球古典舞踊=11月29日、恩納村のハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄

 「量から質」を目指す沖縄観光の消費額を上げる方策として、“富裕層の誘客”は課題の一つだ。高級リゾートホテルのハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄(恩納村)は、沖縄旅行のリピーターや富裕層が求める質の高い観光コンテンツづくりに取り組んでいる。同ホテルはこのほど、琉球伝統芸能デザイン研究室(山内昌也代表理事)と協力し、参加人数を10人に限定したプレミアムイベント「琉球の美」を開催した。

 イベントは琉球芸能と沖縄料理を一つのプログラムとして構成し、参加費は1人税込み2万9000円。宿泊を合わせると同9万円(2人1室)と高単価で売り出した。

 小空間で上演

 イベント会場は、ホテル最高級の客室「瀬良垣アイランドスイート」。リビングに客席を設置し、窓から見える海が背景となる中、歌三線1人と舞踊家1人による琉球古典芸能が披露された。客室という小空間での上演は、劇場とは違う臨場感が味わえる。

 マイクを使わない生の歌三線が部屋全体に響き、歌い手の息づかいや三線の小さな音の表現、踊り手のすり足や房指輪が揺れる音など、細やかな音まで聞くことができる。

 芸能を披露した琉球伝統芸能デザイン研究室は、琉球王朝時代に首里城内で上演されていた宮廷芸能の再現を軸に、少人数と小空間にこだわった上質な空間で芸能を提供する。伝統的な芸は崩さないものの、リゾートホテルとの連携など新たな上演スタイルを模索している。

 芸能鑑賞後はレストランに場所を移し、ミシュラン三つ星を14年連続で持ち続ける神田裕行シェフによる特別メニューが振る舞われた。どぅるわかしーやゴーヤーチャンプルーなど沖縄の食文化が感じられる要素も盛り込んだ。

 山形県から参加した菊地正明さん(72)は「荘厳でしっとりとした芸能が見られて感激した」と満足した様子だ。

 県も富裕層に照準

 ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄では、これまでもエイサーや琉球舞踊のステージを開催してきたが、多くの人を対象に無料で提供していた。今回初めて芸能と料理を組み合わせて商品化し、コアな体験を求める人向けに、質の高いコンテンツとして提供した。

 木嶋明子セールス&マーケティング部長は「富裕層は単に豪華なものではなく『本物』を求めていることが多い。今後もこういったイベントなどを開催していければ」と話した。

 沖縄県も、1人当たりの観光消費単価が高い欧米からの誘客を目指し、2019年度から「海外富裕層向けプロモーション事業」に取り組んでいる。19年度はフランスやドイツの旅行会社を招待したツアーを実施し、県内の有名な観光スポットや工芸館、リゾートホテルなどを巡った。

 県によると、欧米の富裕層は、その土地ならではの体験を重視する傾向にある。招待ツアーでも、食や芸能など独特の文化への関心が高かったという。

 現在は新型コロナウイルスの影響で海外客の入国が見通せないため、当面は国内のリピーターや富裕層に向けたコンテンツを強化していくという。

 県の担当者は「これまで観光客の数は増やしてきたが、質の部分を高める必要がある」と話した。
 (中村優希)