【深掘り】沖電CO2排出ゼロ目標 石炭依存からの脱却、鍵を握るのは?気になるコストは?


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二酸化炭素の排出を実質ゼロにする目標に向けて取り組みを説明する沖縄電力の本永浩之社長=8日、那覇市

 沖縄電力は8日、再生可能エネルギー(再エネ)の主力化などで、2050年に二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにするという目標を発表した。菅義偉首相が10月に所信表明演説で表明した「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ」と同様の目標設定だが、原子力発電や大規模な水力発電のない沖縄では、さらに踏み込んだ挑戦的な目標を掲げた。

 CO2排出が多い石炭火力に頼る沖縄は、政府が掲げる「脱炭素社会」に向けて、他地域以上の対応が求められている。

 ■高い石炭火力依存

 梶山弘志経済産業相は7月、CO2を多く排出する非効率な石炭火力発電を段階的に縮小する方針を表明した。県内では、沖縄電力の具志川火力発電所、金武火力発電所にある計4基と、うるま市石川にある電源開発の2基の全石炭火力発電所が縮小検討対象の非効率発電施設に該当する。

 この石炭火力3発電所の発電量は、県内の電力供給の約6割を占めている。

 沖電は、原子力や水力発電の導入が困難な地域特性から、石炭火力が6割を占める現在の電源構成が「最適」だと理解を求めてきた。これに対し、経産省のワーキンググループ(WG)の委員から「消極的」との指摘もあった。

 今回の新たな環境対策の公表は、地球温暖化対策への取り組み姿勢を内外に示す狙いがありそうだ。

 沖電は石炭火力への依存度が高いものの、CO2排出量は08年の707万トンをピークに減少している。再エネの拡大や、石炭石油に比べてCO2排出の少ない液化天然ガス(LNG)の活用、石炭火力にバイオマスを混ぜて発電するなどの対策により、19年のCO2排出量は583万トンとなった。

 本永浩之社長は8日の記者会見で、波照間島(竹富町)の電力需要を、風力発電由来の電力で10日間近い229時間27分にわたって賄ったことも報告。「世界的に見ても素晴らしい成果で、ギネスに登録も考えている」と手応えを示し、再エネ導入拡大の可能性を強調した。

 ■課題はコスト

 沖縄は地形的に大規模な水力発電ができず、島嶼(とうしょ)県で県外と電力系統がつながっていないこともあり、需要規模とリスク分散の観点から原発や高効率石炭火力の導入は難しい。コスト面が課題となり、単価の安い石炭を多く使用してきた経緯がある。

 県内では経済活動の拡大や世帯数増加が続き、今後も当面は、年平均0・6%のペースで需要が増加すると予想される。県内は中小規模の企業が多く、仮に電気料金が大幅に上昇すれば産業全体に悪影響が生じることが予想される。

 本永社長は「水素やアンモニアを使った発電の技術開発は進んでいる。コストダウンが進み、既存の電源と変わらないくらいの経済性を確保できることが前提条件となる」と語り、環境対策の前提として、発電コストの上昇は避けるという姿勢は維持する。CO2排出ゼロの実現可能性は、将来の技術革新次第という期待含みの面もある。 (沖田有吾)