「市民介護なは」解散へ 不満や喜び…15年で相談3.2万件 人員・財政厳しく区切り


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15年の活動に終止符を打つ「市民介護相談員なは」の(右から)大田友子さん、代表理事の仲本しのぶさん、大城恵子さん=10日、那覇市銘苅のなは市民協働プラザ

 介護施設の利用者の声を施設側に伝え、サービス向上につなげてきた「市民介護相談員なは」(那覇市、仲本しのぶ代表理事)が、本年度いっぱいで活動を終え解散することを決めた。2006年度の発足後、那覇市を中心に19年度末までに応じた相談は延べ約3万2600件に上るが、後継者が不足し、財政基盤が脆弱(ぜいじゃく)という困難を抱えていた。今年は新型コロナウイルスの影響で十分活動できないことも踏まえ、区切りを付けることになった。 (當山幸都)

 市民介護相談員は元々、那覇市の事業として01年度に始まったが、財政難を理由に04年度で打ち切られた。だが、相談員だった仲本さんらが06年に「市民介護相談員なは」を発足させ、行政からの委託ではない全国初の自主派遣事業を展開。11年に一般社団法人化した。現在は那覇市内外の17施設と契約し、12人いる相談員が2人ずつ、月に1度、各施設を訪問する。利用者から不満や要望、喜びなどを聞き、相談員の気付きとともに報告書にまとめ、施設に提出。介護サービスの向上につなげてきた。

 仲本さんによると、当初は施設側から「ちょっと見ただけで何が分かるのか」と言われることもあった。だが、活動を続けるうちに「外部の視点を入れる意義は、紆余曲折(うよきょくせつ)はあったものの理解されてきた」(仲本さん)

 ただ、相談員や活動資金の確保は常に課題だった。大田友子副代表理事は「訪問先は大きな法人も多く、相談員にスキルが求められる。ボランティアとはいえ、ハードルは高い」と後継者確保の難しさを語る。

 本年度は新型コロナの影響で、17施設のうち5施設はまだ一度も訪問できていない。利用者の手を握ったり、時間をかけたりしながら話を聞くこともできず、当面は活動が制約されることも踏まえ、解散する決断に至った。手続きがあるため法人は来年度まで残る。

 「やることがなくなったからではなく、課題はまだ多いのに力尽きてしまった。希望者がいれば引き継ぎたい」と仲本さん。自らが担ってきた第三者的な組織の必要性については「行政が動くことも大事だが、施設の関連団体でもサービスの質を担保する仕組みを考えるべきではないか」と指摘。大田さんも「高齢者施設での虐待も増えており、この役割は今後も必要になる」と話した。