沖縄関係7税制延長 県経済界は歓迎 制度再検証を促す声も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
2021年度与党税制大綱で存続が決まった沖縄関係7税制

 2021年度の与党税制大綱で、酒税の軽減措置をはじめとする沖縄関係7税制の1年延長が決まった。経済関係者からは歓迎の声が上がる一方、22年度から始まる新たな沖縄振興計画に向けて制度の再検証など、政策効果をより高めていくための議論をするべきだとの意見が相次いだ。

 沖縄関係7税制のうち、酒税の軽減措置は復帰特別措置法を根拠として1972年から存続している。復帰後から2018年までに税が軽減された累計額は約1343億円に上っているものの、泡盛業界では出荷量が04年をピークに18年まで14年連続で減少するなど、厳しい状況が続く。

 県酒造組合の佐久本学会長は「コロナ禍で業績が厳しい中、延長はありがたい」と軽減措置の延長を歓迎した。県内の酒造所は地域に根ざした零細企業が多いとして「雇用や経済の発展のためにも酒税軽減による支援は引き続き必要だ」との考えを述べた。

 ただ、泡盛の出荷量が減少する中で、業界全体の成長策を打ち出せるのかも喫緊の課題となっている。佐久本会長は「延長は必要だが、ずっと酒税措置に頼っていては駄目だ」とも指摘。県外や海外市場への進出など努力を重ねていく必要があると強調した。

 県内全域が対象となる観光地形成促進地域の課税特例も決まった。スポーツや文化施設などの設備投資で活用できる制度だが、現振興計画が始まった12年から17年まで6年間の適用件数は25件にとどまる。

 沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光業界の復活に向けて、より観光業界にとって使いやすい制度にしていく必要がある。また、沖縄観光の量から質への転換につながる制度に向かう必要がある」と話し、新たな振興計画策定で制度設計の議論を深めるべきだとの考えを示した。

 情報通信産業や国際物流拠点産業など、県外から企業を誘致するための税制も存続が決まったが、いずれも実際に誘致につなげられるのかが焦点となる。

 県商工会連合会の米須義明会長は各税制の存続を歓迎しつつも、今後の1年間の重要性を指摘する。河野太郎沖縄担当相が、沖縄振興について「効果をデータで検証する」と発言していることを挙げ、「これまでと同様のアプローチではなく、復帰50年の節目に沖縄側が自ら検証していく必要がある」と強調した。