与那国を日本とアジアの「結節点」に 台湾へ高速船、就航目指し21年度に実証実験も


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 【与那国】与那国町は、本年度から台湾と与那国島を結ぶ高速船就航に向けた調査事業を実施している。日本最西端に位置する国境の島としての地理的条件を生かし、日本と台湾・アジア圏域との「結節点」としての可能性を探る。2021年度に実証実験を行うために準備を進めており、将来的な定期航路化を目標に定める。

与那国島から海の向こうに見える台湾=与那国町

 与那国島と台湾の距離は111キロで、石垣島との127キロ、沖縄本島との509キロよりも近く、かつては一体的な生活圏を形成していた。日本―台湾の貿易ルートの拠点としての機能もあり、台湾との交流は与那国島繁栄の素地(そじ)となった。だが現在、経済的交流はほぼない。島は人口減少傾向にあり、町は台湾との交流を“復活”させることで、島の自立につなげたい考えだ。

 高速船事業は与那国島の祖納港か久部良港と台湾東部にある姉妹都市・花蓮を2~3時間程度で結ぶ構想。高速船による「ボーダーツーリズム(国境観光)」の実現で人的交流を進めた上で、将来的には医療や教育、産業面での施策につなげる展望を描く。

 一方で、高速船事業実現にはCIQ(税関、出入国管理、検疫)施設整備や、国際外航航路を運航できる船舶確保などの課題がある。町は実現に向けた条件整理や実証実験準備のため、20年度に「町国境交流結節点化推進事業」として事業費約4千万円を計上した。一括交付金を活用した。

 同事業では、コンサルタント会社に委託し、潮流などの海象調査や法的根拠・事務手続きの整理、市場調査のほか、実証実験で使う船舶の確保などを進める。11月30日には事業検討委員会の第1回会議が開催され、現状を確認した。

 町企画財政課の小嶺長典課長は「台湾との交流は何度も話が浮かんでは消え、浮かんでは消えた。課題はあるがクリアできると考えているので、今回はぜひとも実現し、可能ならば5年以内に定期航路化したい」と意気込んだ。