沖縄県が介護・医療現場に月1回のPCR検査 医師「週1回が望ましい」 県予算との兼ね合いも


沖縄県が介護・医療現場に月1回のPCR検査 医師「週1回が望ましい」 県予算との兼ね合いも
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 沖縄県は介護施設や医療機関の職員に対する新型コロナウイルスの定期的なPCR検査のため、5億9800万円を補正予算案に計上し、県議会11月定例会で可決された。県内の介護施設職員約3万3000人、医療機関の職員約7000人を想定し、月に1回の検査を1月ごろから一斉に始める予定だ。一方で感染症の専門家からは「1カ月に1回では少ない」との指摘もあり、実効性には懸念もある。(中村万里子)

 県内では7月以降の“第2波”で市中感染の拡大に伴い、高齢者福祉施設や医療機関でクラスター(感染者集団)が相次いだ。一斉・定期的な検査は、重症化しやすい高齢者の施設や医療機関で、症状が出始める前の感染者を見つけ、クラスターを防ぐ狙いがある。

 しかし、月1回の頻度について、県立中部病院感染症内科の横山周平医師は「早期発見を目的とするならば、定期PCR検査は週1回の頻度が望ましい」と指摘する。

 新型コロナは症状が出る2日前から周囲へ感染させてしまうとされている。横山医師は、感染から10日が経過すると「周囲への感染性はなくなるがPCR検査は陽性が続く」こともよくあるという。早期発見が必要にもかかわらず、感染性を失ったタイミングに検査が重なり、陽性となることも考えられる。そのタイミングでの就業制限はかえって「医療・介護現場の人手不足を招きかねない」と懸念し、検査頻度を高める必要性を訴える。

 厚生労働省も医療機関などでの一斉・定期的な検査を呼び掛けるが、頻度は示しておらず、各自治体が判断することになる。

 県の担当者は検査の頻度について「増やした方がいいのは分かるが予算との兼ね合いもある」と話す。

 県は、定期的なPCR検査の1人当たりの費用を抑えるため、複数人の検体をまとめて検査する「プール方式」を採用する。厚労省は、同方式は検査精度を精査中として、国費を使った行政検査を認めていない。群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師(臨床疫学)は「対象人数が多く十分な予算が必要となるので政府の責任で行うべきだ。プール式は低コストで迅速にできるので、早期に承認すべきだ」と指摘し、クラスターが相次いだ事態を繰り返さないよう警鐘を鳴らす。