【深掘り】「忘年会控えて」にびっくり 飲食業界と沖縄県「ぎりぎりの線」コロナ緊急対策の本音は?


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玉城デニー知事の記者会見に同席し、県民に向けて「命を守るための呼び掛け」のメッセージを読み上げる県医師会の安里哲好会長(左から2人目)=14日、県庁

 新型コロナウイルス感染拡大防止の「緊急特別対策」に関する14日の記者会見には玉城デニー知事だけでなく、医師会や飲食業界の代表らも一堂に会した。年末年始の医療崩壊を「県民一丸となって防ごう」と強くアピールする狙いがある。一方、忘年会の開催など、それぞれの立場から県民に呼び掛けるメッセージの内容には齟齬(そご)も見られた。県は9月下旬以降、新型コロナ注意報、警報、感染防止対策の集中実施と、注意喚起のレベルを高めてきたが、効果は見られないまま年末に突入する。医療と経済の両輪維持のため「ぎりぎりのところで折り合えた」(県幹部)と言うが、飲食業関係者からは繁忙期の時短要請に「正直、最悪のタイミングだ」との声も漏れる。(座波幸代)

■忘年会どうする?

 会見は県医師会の安里哲好会長による県民へのメッセージの読み上げで始まった。「命を守るための呼び掛け」として見せたパネルには「忘年会を控えて下さい!」と書かれていた。

 一方、玉城知事が発表した忘年会・新年会など会食の対策は「4人以下、2時間以内の徹底と夜10時までの解散」とし、経済活動を止めないため、忘年会などの開催自体は否定しない。

 地域限定の時短要請など「ぎりぎりの線で了承した」という県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は会見後、「医師会の『忘年会を控えて』のパネルを見てびっくりした。でも、まとまってコロナ対策の姿勢を示すという意味では一緒にできてよかった」と明かした。

■結果論だけど

 県幹部はこのタイミングでの対策実施について「知事のスタンスは感染防止対策と社会経済活動を両輪でやっていくことだ。今回は特に医療の部分が厳しく、対策を少し強めに打つということで産業界の理解をいただいた」と説明する。

 だが、飲食業関係者からは「結果論だが、10月から11月の暇な時期に強い措置をして、感染者数を減らして年末を迎えられたらよかった」と一番のかき入れ時の時短要請に頭を抱える。

 安里会長は流行の第1波の時期に、知事が先頭に立って来県自粛や行動自粛を呼び掛けたことが収束につながったと評価する。一方、春夏とは違い、救急医療の病床が逼迫(ひっぱく)する冬場の流行が続いていることに「今の状態では我々もどうしたらよいか」と吐露する。「我々は我々の主張が望ましいと考えている。(県の対策は)不十分ですよ」と、今の対策では新規感染者を減少に転じさせることは難しいという認識だ。