【深掘り】持ち直しの動きに「水差された」 想定上回るキャンセル、沖縄観光関係者の落胆


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「Go To トラベル」の地域共通クーポンを取り扱う土産品店=15日、那覇市の国際通り

 政府の観光支援策「GoToトラベル」の年末年始の一時停止が決まり、県内のホテルで予約キャンセルの動きが広がった。同事業で東京発着旅行が対象に追加された10月以降、県内観光業は徐々に持ち直しの動きが出てきていた。それだけに、突然の全国的な事業停止で、観光事業者らの落胆は大きい。本島北部のホテル関係者は「政府が発表して1日しかたっていないが、想定を上回るキャンセルの数だ。今後はもっと増えていくだろう」と悲観的に見通す。

(池田哲平、中村優希)

■浮揚機運に水

 GoTo事業に期待し、年末年始の宿泊客を迎える準備の真っ最中にあるホテル関係者の間には、直前になっての唐突な政府の判断に疑問や困惑が広がっている。観光業界が浮揚する機運に「水を差された」(那覇市内のホテル支配人)と、痛烈に批判する声もあった。

 恩納村内のリゾートホテルでは、GoTo効果で前年の年末年始を上回る客室稼働率になると見込んで、県外の派遣会社からスタッフを呼び込んで対応する予定だった。  だが、事業の停止を受けて、15日の午前中だけで150人分のキャンセル通知が来た。このため派遣スタッフについて人数を減らすなどの検討を始めた。年始用のおせち料理など季節ものの食事は既に発注を掛けており、大幅に余る可能性が出ているという。

 沖縄本島で複数のホテルを運営する企業によると、Go Toの一時停止期間から外れている時期の予約をキャンセルする動きもあった。担当者は「医療が逼迫(ひっぱく)していることもあっての判断だと思うが、今回の一時停止によって他期間の旅行需要にも影響を与えている」と表情を曇らせた。

 事業停止の影響は宿泊業だけにとどまらない。国際通りにある土産物店の平良勝宏店長(44)は「厳しい状況になる」と、GoToの一時停止に肩を落とした。観光客の激減から今年4~8月の4カ月間は休業せざるを得ず、大量の在庫を半額で売りさばくなどして、何とか店を継続させてきた。

 営業再開後の来店客の5割以上は、Go To事業の地域共通クーポンを利用したため、事業の恩恵は大きかったという。客単価が上昇し、高価な土産物を買う客も増えていた。 本来なら書き入れ時の年末年始にもかかわらず、平良さんは「状況を見ながらだが、発注する品物を減らすことも検討しなければならない」と語った。

■戦略の再検討

 「GoToトラベル」は、県や市町村の補助事業と組み合わせて使えることも特徴だった。県が補正予算で事業化した「おきなわ彩発見バスツアー」は、GoToとの組み合わせで大幅な割引が適用され、年末年始で県内客に人気があった。

 年末にバスツアーを予約していた那覇市の女性は、ツアー会社に影響の有無を問い合わせたが、「国からも詳細が来ておらず分からない」と回答されたという。女性は「年末なので、今から別の予定は入れづらい。国はもっと早く決めてほしかった」と話した。

 Go Toの一時停止期間中の彩発見キャンペーンについて、所管の県MICE推進課は「事業者からも意見を聞いてどうするかを検討する。早急に決めたい」と述べた。政府の停止決定で自治体の経済戦略の再検討も迫られている。