米側主張を沖縄県警が検証できない「合意議事録の壁」を識者指摘 緑ヶ丘事故


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緑ヶ丘保育園の上空を飛ぶ米軍機=2018年6月、宜野湾市野嵩

 宜野湾市の緑ヶ丘保育園に米軍ヘリの部品カバーが落下した問題で、県警が原因の特定に至らず調査を事実上、終えた。県警は実証実験にまで乗り出したが、米軍が関与を否定していることが大きな壁となった。米軍の言い分を、県警が客観的に検証するすべはない。琉球大学の山本章子准教授は日米地位協定と同時に結ばれ、日本側の基地外での捜査権限も放棄した合意議事録の存在を指摘する。

 米軍は、保育園に落ちてきた物体がCH53大型輸送ヘリコプターの部品カバーであることを認めている。一方で所有しているカバーは全てそろっており、米軍が落とした物ではないと主張した。地位協定で守られた米軍でなければ、警察機関はその説明が事実であることを証明するよう資料や現物の提示を求めるのが通例だ。

 県警は「(米軍と)必要なやり取りはしている」と説明するが、どの程度協力するかは米軍の裁量に委ねられている。一般的な捜査・調査と同じ水準での協力は得られていないとみられる。

 山本准教授が占領期の特権を温存した事実上の密約だと指摘しているのは、地位協定の本文ではなく、実際の運用を規定している合意議事録だ。地位協定の本文は、基地外の事故・犯罪捜査で米軍の警察は「必ず日本国の当局との取り決めに従う」と定める。だが合意議事録で日本の警察は基地外でも米軍の事件・事故の捜査を行わないとされている。

 また「日米合同委員会は事件・事故の発生時に通報手続きを定めているが、日本側に通報するかどうかの判断は米側に委ねられているのが実情だ」とも指摘。軍事機密を理由に事件・事故を隠す傾向にある米軍の姿勢も背景にあると説明した。