国内無敵の王者・レスリング屋比久翔平 盤石な守りで見据える世界


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 レスリングの全日本選手権第2日は18日、東京・駒沢体育館で計8階級が行われ、男子はグレコローマンスタイル77キロ級で東京五輪アジア予選(来年3月、中国・西安)代表の屋比久翔平(浦添工高―日体大―日体大大学院出、ALSOK)が3試合を勝ち、2年連続5度目の日本一に輝いた。同87キロ級の鶴田峻大(沖縄尚学高出、自衛隊体育学校)は3位に入った。五輪アジア予選代表でグレコ130キロ級の園田新(ALSOK)は7連覇、フリースタイル97キロ級の赤熊猶弥(自衛隊)は3連覇を果たした。グレコ87キロ級の阪部創(自衛隊)とフリー65キロ級の山口海輝(日体大)は初優勝。東京五輪代表が出場を見送った女子は76キロ級で鏡優翔(東洋大)が2018年大会の72キロ級以来2年ぶりに頂点に立った。50キロ級で吉元玲美那(至学館大)、62キロ級で尾崎野乃香(エリートアカデミー)が初制覇した。


国内無敵 見据える世界

グレコローマンスタイル77キロ級決勝 歯を食いしばって相手に圧力をかけ続ける屋比久翔平(奥)=18日、東京・駒沢体育館(長嶺真輝)

 第1ピリオドで相手にパッシブが宣告され、屋比久翔平がグラウンドから得意の投げ技に入る。しかし決まらず。ルール上、第2ピリオドでは自身がパッシブを受けることになる。はた目からは不利に映る状況だったが、今や国内敵なしの王者に焦りはなかった。

 「最近は国内大会でグラウンドから返ったことはない」

 言葉通り、うつぶせ状態で背後から攻められても左半身を強くマットに押し付け、簡単に腹側に手を入れさせない。リフトやローリングに対しても強じんな体幹で技をつぶした。

 1―1で残り1分52秒。「最後まで攻め続けるレスリング」を掲げる屋比久が本領を発揮する。この日3試合目の終盤でも体力は全く衰えず、ひたすらスタンドで押し続ける。残り約1分で相手にパッシブが宣告され、そのまま2―1で勝ちきった。

 終了後、相手が肩で息をしていたのに対し、屋比久は平然とした表情で立っていた。

 コロナ禍でマット練習ができない期間もあり「気持ちを上げようとしても上がらない時期もあった」と言うが「その中でも考えて練習し、仕上がりはいい」と及第点を付ける。

 東京五輪アジア予選は来年3月の予定。大一番は近い。「海外選手はもっと速いし、もっと力強い。階級が上の選手やスピードのある選手と練習したい」と世界基準を見据え、鍛錬を続ける。

 (長嶺真輝)