【識者談話】医療不安払拭の責任は国にある 島村聡氏(沖大教授)


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島村 聡 氏(沖縄大学人文学部福祉文化学科)

 子どもの医療費について、沖縄県が中学校卒業まで助成対象を広げることは大いに歓迎だ。子どもを抱える家庭の不安を軽減してほしい。

 市町村は国民健康保険(国保)のペナルティーだけではなく、現物給付による利便性向上で受診が拡大し、医療費負担が増すことを恐れ、現物対応に前向きになれない。償還払い方式は自動償還方式であっても立て替えが必要となる。手持ちの現金の少ない低所得家庭の親は、子どもの受診抑制をせざるを得ず、親自身も受診控えにより健康を崩す。2018年度の県小中学生調査で「子どもを医療機関に受診させることができなかった」と回答した人は、困窮層が15・7%となり、非困窮層の3・6%の4倍もいた。

 低所得家庭については、福祉団体などが医療費を本人に代わって医療機関に支払い、後日、市町村から助成金を受け取ることで、実質的な現物給付を実現することも可能だ。処理が難しい入院医療費も、高額療養費を上限とした助成を行うことを検討すべきであろう。

 低所得者の医療不安を払拭(ふっしょく)する責任は第一義的に国にある。市町村の努力に逆行する国保ペナルティーの廃止と、子ども医療費助成制度の創設を求めたい。 (社会福祉)