「子どもたちの命守るため」 基地の街で暮らす母親の決意<第3次普天間爆音訴訟>


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長女の莉杏さん(左)と次女の莉衣沙ちゃん(右)と遊ぶ知念涼子さん=19日、宜野湾市野嵩の緑ヶ丘保育園

 宜野湾市新城に住む会社員の知念涼子さん(45)は、次女の莉衣沙(りいさ)ちゃん(4)が発した言葉が忘れられない。3年前の夜のこと。当時1歳だった莉衣沙ちゃんを寝かせるために、絵本を読み聞かせていた。その時、自宅から約10メートル先の米軍普天間飛行場からヘリコプターの騒音が響いた。「お母さん、『ドーン』だよね」。莉衣沙ちゃんが通う市野嵩の緑ヶ丘保育園では、その数日前の2017年12月7日、米軍ヘリの部品が1歳児クラスのトタン屋根に落ちた。

 上空を通過する米軍ヘリの騒音と、部品が落下した時の「ドーン」という音を、莉衣沙ちゃんが覚えていたことに知念さんは衝撃を受けた。「(1歳でも)知っているほど、すごい音だったのだろう」。涙が出て、その夜は眠れなかった。

 普天間飛行場のフェンスと接するほどの距離に実家がある知念さんにとって、基地は当たり前の存在だった。テレビの音が騒音で聞こえず、近くを飛ぶ固定翼機の危険性を感じることはあったが、基地から派生する被害に対しては「自分自身が気を付ければいい」と考えていた。しかし、子どもが生まれて初めて「誰かを守りたいという気持ち」を抱くようになった。

 娘が通う保育園に部品が落下し、6日後には母校の普天間第二小に米軍ヘリの窓が落ちた。普天間飛行場が住宅密集地に接し、保育園や学校上空を飛び交う現状は「許される状態ではない」と実感した。

 知念さんは今回初めて、米軍機の飛行差し止めと損害賠償を求める第3次普天間爆音訴訟に、娘2人と夫の4人で加わる。「お金が目的ではなく、子どもたちの命を守るため、基地をどうにかしてほしいとの思いがある」と参加理由を語る。

 保育園では落下事故の後、保護者らで「チーム緑ヶ丘1207」をつくり、米軍機が園上空を飛ばないよう関係機関に求めてきたが、現状は変わっていない。「子どもたちがのびのびと生活し、物事に集中できる環境をつくるのは、大人の責任だと思う」。知念さんは子どもたちを守るために強い決意をにじませた。
 (金良孝矢)

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 米軍普天間飛行場の騒音や危険性に悩まされる周辺住民が、米軍機の飛行差し止めと損害賠償を求める第3次普天間爆音訴訟を、25日に那覇地裁沖縄支部へ提起する。過去最大の4千人超となった原告はどのような決意を胸に抱き、訴訟に臨むのか。それぞれの思いを取材した。