ジェンダー平等の住みやすい社会とは? 大崎氏が講演 女性の政治参加、管理職登用の課題などを紹介


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
ジェンダー平等や女性のエンパワーメントについて世界や日本での取り組みを紹介する大崎麻子さん

 ジェンダー平等や女性のエンパワーメントの専門家として国連開発計画(UNDP)で世界各国のプロジェクトに取り組んだ大崎麻子さんがこのほど、那覇市内で講演した。「男女共同参画の視点から見る住みやすい社会とは~これからのキャリア形成・私たちができること」と題した講演では、日本国内における行政や企業によるジェンダー平等への取り組みなどについて紹介した。(慶田城七瀬)

 講演は、県内在住の20~40代を対象とする女性人材育成事業「てぃるる塾」の一環で、公開講座として開催された。

 ジェンダー平等とは、男性と女性が等しく権利や機会、責任を持ち、意志決定にも対等に参画できる状況を指し、国連加盟国193カ国全てが合意した達成目標で、国際社会では人権に根づいた概念であると紹介した。また、日本で女性活躍を指すことの多い女性のエンパワーメントは、「自分の意志で人生のあらゆる選択肢を自分で決定し、行使する力を身に付けることを指す」とした。ジェンダー平等がSDGs(持続可能な開発目標)のゴールの一つとして知られるようになり、正しい理解が広がっているという。

 大崎さんは、女性のエンパワーメントで最も重要とされているのは政治への参画だとし、「女性が地域社会に関わり、国会議員が何をやっているかをしっかりチェックする。生き方、暮らしの選択肢を広げる。法律で決まる公共サービスで自分たちの税金がどう配分されるか。政治に参加するところまでを含めて女性のエンパワーメントだと言える」と強調した。

大崎麻子さんの講演を聞く「てぃるる塾」の参加者ら=11月14日、那覇市西の沖縄県男女共同参画センター「てぃるる」

 父方の祖父が沖縄出身という大崎さんは、戦後の沖縄で女性が婦人会を組織し生活改善運動など政治に参画していった経緯にも言及した。自身がUNDP時代に関わった内戦後のカンボジアでの復興支援と重ね合わせ「どこの復興地域でも女性たちの力が大きい」と紹介した。

 大崎さんは、25年近くジェンダー平等の取り組みについて途上国をはじめ、日本各地の自治体と関わってきたが、ここ1年で民間企業との関わりが増えている。その背景を「機関投資家がSDGsに基づいて企業の成長を判断するESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)が拡大し、数値目標を掲げて職場をジェンダー平等の環境にしていくうねりが起きている」と説明した。

 直近の話題として、経団連(日本経済団体連合会)が成長戦略で企業の役員に占める女性の比率を2030年までに30%以上にする目標が盛り込まれた報道にも触れた。「役員会に多様性があるかどうかが企業の存続に非常に重要で、その第一歩が女性。経団連の流れもここから来ている」と強調した。

 世界各国のジェンダーギャップ(男女格差)指数が日本は19年に121位で、経済と政治の分野で進んでいない現状について「日本も少しずつ男女格差は縮んでいるが、他国がものすごい速さで進んでいる」と指摘した。

 女性管理職の登用が進まない状況について企業から聞き取りした内容も紹介した。女性の仕事と育児の両立支援が「ワンオペ」の仕組みを強化することになってしまい「女性を支援しても途中でやめる、管理職になりたがらない」と話したという。「女性の両立支援ではなく、男女ともに家庭のケアと仕事を両立できることが必要だ」とし、男性の育休取得の促進へと育児支援の流れがシフトした経過を語った。