一括交付金減に落胆 沖縄予算 経済界、1000億割れで懸念 観光、新規計上に期待も


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 2021年度の沖縄関係予算は、4年連続で同額となる3010億円で決定した。このうち県が使途を決められる沖縄振興一括交付金については981億円と初めて1千億円の大台を割り込んでおり、県内経済界からは落胆や懸念の声が上がった。

 県経済団体会議の石嶺伝一郎議長は「厳しい財政状況の中、第3次補正と合わせて約3200億円の予算を確保してもらった。経済界としても、国や県と連携しながら、新型コロナの感染防止と県経済の回復に全力で取り組んでいく」とコメントを出した。

 一方で、県建設産業団体連合会の津波達也会長は一括交付金の7年連続減額に「とてもがっかりしている。(創設)当初からすると大幅に減っていて、今後が心配だ」と語った。

 新型コロナウイルス感染症の影響で観光客が激減し、観光需要に牽引(けんいん)されてきた民間の投資意欲も低下している。「県経済が落ち込む中で、公共投資で下支えすることが必要だと県に言い続けてきた。道路などのインフラをしっかり整備して、観光が回復した後の発展につなげることが大事だ」と強調した。

 県中小企業家同友会の喜納朝勝代表理事は「中小企業は地域にとってインフラのような存在だ。雇用維持の観点などから、予算とは別に、永久劣後ローンの制度の仕組みを早期に創設してほしい」と要望した。

 観光分野では、長期滞在型の新たなサービス開発を支援する「新たな沖縄観光サービス創出支援事業」として、新規に3億円が計上された。沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「コロナ禍で、安心安全にゆっくり過ごしたいというニーズも出てきている。予算を活用し、県内企業の新たな取り組みにつながればいい」と期待した。

 一方、製糖業の働き方改革を見据えた「沖縄製糖業体制強化対策事業」は2億円の減額となった。日本分蜜糖工業会の上江洲智一会長は「事業計画に応じた減額であり、計画上の大きな支障はない」と述べ、季節工の宿舎整備などを継続するとした。

 JA沖縄中央会の大城勉会長は「沖縄の農業振興や食料安定供給のためにも各種施策は必要だ。特に一括交付金を活用しての効果は大きく、農業振興に支障を及ぼさないか懸念している」と指摘。農家の所得向上や生産拡大に向け、必要な予算の手当てを国や県に求めていく姿勢を見せた。