【記者解説】名護市長意見なぜ否決? 辺野古の軟弱地盤、求められることは


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埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=9月3日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 名護市辺野古の新基地建設に向けた設計変更承認申請について、同市議会は渡具知武豊名護市長の意見を否決した。市長は提案を急いだが、3月26日の期限まで長時間を残したまま提案したことや、軟弱地盤に触れなかったことが「拙速だ」「矮小(わいしょう)化している」などと野党の反発を招く結果となった。今後、名護市長の意見が知事判断に反映されるか否かは、3月議会への市長意見の再提出を「内部で検討する」とした渡具知市長の判断に委ねられている。(岩切美穂)

 市議会で市側は市長意見の提案を急いだ理由を「市長意見は、県が集めた市民意見と同等に扱われる。市民意見の聴取は終わっているので可能な限り早く意見を申し上げたい」と説明した。一方で県は「市が意見を出さないのなら、それを市の意見として受け止める」と述べるにとどめ、市の判断に対する発言は避けた。市長意見の早期提出が、手続きを後押しすることはないとみられる。

 県は沖縄防衛局が申請書を提出した4月21日を始点に、土日や祝日を含まない163~223日間を審査期間の目安とする標準処理期間としている。この期間の中で、告示・縦覧で寄せられた利害関係人からの意見の取りまとめ、名護市長や海上保安庁などからの意見聴取、申請書の内容審査などを進めている。

 市議会傍聴に訪れた市民らは取材に対し「市長は6万3千人の名護市民の代表だ。軟弱地盤による地盤改良工事が、市民の暮らしや環境にどう影響するか考えて意見を提出する責任がある」と述べ、議場を見つめた。市長には、軟弱地盤の存在で長期に及ぶ工事に向き合い、見解を示す責任がある。