復元作業が進む首里城 大龍柱の向き、32軍司令部壕の議論も活発に<沖縄この1年・2020>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
火災から復元工事が進む首里城=11日、那覇市

 琉球文化の象徴である首里城正殿など主要6棟が全焼し、2棟が焼損した2019年10月末の火災から1年余がたち、復元へ向けた再発防止体制や、琉球文化の発展、首里城を中心としたまちづくりの議論が進んだ。 (梅田正覚、島袋良太)

 県警と那覇市消防局は3月までに、現場の検証や監視カメラの精査を踏まえ、火災原因を判定する有力な証拠は見つからず、「原因不明」と結論付けた。火災につながる重大な過失を確認できなかったとし、関係者への刑事責任も問えないと判断した。県の第三者委員会「首里城火災に係る再発防止検討委員会」は9月、首里城に対する防火の備えはハード・ソフト両面でほとんどなかったとする中間報告を公表。再発防止に向けた指定管理体制の変更も議論している。

 火災で焼失した正殿などのがれきや瓦の撤去は完了した。国は「見せる復興」を掲げ、再建作業が進む城郭内を6月から公開した。正殿の本体工事に22年度から着工し、26年度に完成させる計画だ。新たな正殿には基本的には国産ヒノキを使うが、構造材の基幹となる「小屋丸太梁」に県産のオキナワウラジロガシを使うことが決まった。構造材の原資は県、那覇市に寄せられた寄付金だ。沖縄美ら島財団に寄せられた寄付金は美術工芸品の修復に活用される。3者への寄付金総額は50億円を超える。

 大龍柱の向きについても議論が巻き起こった。1877年にフランス人が撮った写真に正面向きの様子が写っていたことから、国の「首里城復元に向けた技術検討委員会」は改めて向きを議論する方針を示した。

 県は4月に「首里城復興基本方針」を公表し、首里城を核とした歴史的なまちづくり「新首里杜構想」の策定を盛り込んだ。議論を進め、20年度末に基本計画を策定する。チャリティーイベントや街頭募金活動、売り上げの一部を再建に寄付する商品やサービスの販売を通して市民や企業の支援活動も続く。

 首里城に注目が集まる中、戦時中に地下に掘られた日本軍第32軍司令部壕の保存・公開を求める議論も活発になった。県は20年度に外部有識者らでつくる新たな検討委員会を設置し、保存や公開、継承の在り方を議論する。